びび び

物質界の奥村燐はいつも泣いている気がした。

「どうしました奥村燐。」
「っ!…お、まえはなんでいつもいきなり来るんだよ…」
「いきなり来るのは悪いですか?」
「悪いつか…心の準備とかあんだろ」
「……キミが泣き止むのを待てという意味ですか奥村燐。」
「な、何の話かなぁ〜?…あっ、ていうか!いつになったらフルネームやめんだよなんかもう語尾みたいになってんぞ」
「じゃあ何と呼べばいいんですか奥村燐。」
「だー!もう燐でいいから!ほら、りんだ燐!」
「りん、」
「おう…なんか一気に距離縮まったな」
「キミが呼べって言ったんでしょう。」
「まぁ、そうだけど…」
「燐。キレーなオトですね燐。」
「綺麗、か……?」
「ハイ。」

燐。りん。鈴の音のような響き。青い炎のキレーな色、魔神の色。ただ父上と同じ炎だとしても不思議と燐の炎なら燃やされてもいいと思った。何より『キレー』な燐になら。
だからボクは時々物質界が分からなくなる。こんなに『キレー』な燐を何故物質界は厭うのだろうかと。夜な夜な一人で痛みを堪える燐を見ると物質界は時に虚無界より残酷ではないか、と。

「燐は」
「?」
「虚無界に来ないんですか。」
「…たりめーだ。やだよ悪魔ばっかなんだろ」
「でも、きっと燐は傷つかないと思うんです。」
「は、」
「きっとこんな遅くに一人でいる必要も、ない。」
「あー……、お前は知ってんのか……」
「燐、虚無界に来ませんか。」
「俺は、行かないよ」
「何故、」
「そりゃ、虚無界にゃ嫌なことはねーかもしんねーけど……」

まだ、俺には物質界に未練があるんだ。悪いな。
奥村燐は笑った。
ボクには分からない。物質界も、奥村燐も。
そもそもボクが奥村燐をこんなに気にしているのも。

「燐。」
「なんだよ」
「ボクもうキミが泣いてるの知ってるんですけど。」
「……そーかよ」
「燐。」
「…なんだよ」
「物質界が嫌になったら虚無界に行きましょうね。」

奥村燐は一瞬ぽかんとしてから終ぞ笑った。照れたように。

「……やーだよっ」

笑顔を見てそこで分かったのはひとつ、奥村燐が物質界で泣くのはボクのカンに障るということだけ。








▼ アレ…物質界で泣く燐を救う王子様的アマイモンだった筈が電波的に。








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