いらない感情が水没

いつもの気紛れかと、奥村燐が呼び出されたかと思えば理事長、メフィスト・フェレスは着流しを身につけ、その手には夏の風物詩とも呼べるホラー映画のDVDがあった。

「日本の夏はこれを見て涼むのだと聞きました!」
「まぁた微妙に季節外れな…」
「まだ暑いからいいじゃないですか。…それに、キミが夏休みの時は借りれなかったんですよ」
「おま、レンタルショップとか行くんだな」
「出来れば購入もしたいのですが、ボックスで買うと意外と場所取ったりするんですよ」
「あーなるほどな」
「では早速」

数分後、奥村燐はメフィストに抱えられる形でやたら広いソファーに座っていた。

「しかしあんな暗い中じゃ夜目も利かないでしょうにわざわざなんで袋小路に逃げ込むんですか明るい方に行くべきでしょうあああ髪の毛を整えてくれればあんな外見にならずにすんだのに…」
「おまえ、悪魔のくせに怖いのか」
「イイエ?……別に怖くなんてありませんよ?」
「じゃあこの手はなんだ」
「気になります?」
「まぁ……別にいいけどよ」

言葉とは裏腹に自分を抱き締める腕に少しだけ燐は笑う。
なんだ、いつも変なかっこの割に可愛いとこあるじゃん。
そうは思うものの日本のホラー映画といえば嫌にリアルで燐も少し怖くなる。こいつに縋るのもなんだか情けない気もしたが、実際メフィストもぎゅうぎゅう抱きついてきている訳で。
まぁちょっとくらい…と燐は己を抱き締める腕に小さくしがみ付いた。

「燐くん、」
「なんだよ」
「一緒に寝ませんか」
「はは、しょうがねぇなー」
「途中でどこか行ったりしませんか」
「行かないよ、男に二言はねぇ」

あからさまな誘い文句にも関わらず、やはり兄気質の燐は弱ってるなぁと内心笑いながら二言目には了承の意を出す。そのあまりにあっさりした返事にメフィストはニヤリと小さく笑い、油断しきっている燐をひょいと抱き上げた。

「ではまずお風呂に行きましょう!」
「へっ?」
「ああもう燐くんが可愛いので私はどうにかなってしまいそうです!」
「え、あの、メフィスト?」
「なんなんですかあの躊躇いながらのぎゅーとか!幼い子を見るような笑顔とか!ホラー映画万々歳ですねー」
「う、嘘つき!下ろしやがれ!」
「ぷくく、嘘は言ってないですよ。怖いなんて言ってないでしょう?」
「卑怯だぞ!」
「何とでも!燐くんは快く了承してくれましたもんねぇ?男に二言は無いんでしょう」
「ちっくしょ、自爆…!」



いらない感情が水没




▼ この後美味しく頂かれました。
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