うつつにしずむ


「嘘だろ、」

折原臨也は混乱していた。何故なら目の前には今最も興味を持っている少年が己に甘えているからだ。
少年が「いざやさん」と、囁く。甘えるように、期待をしているかように。
確か己の記憶の中では自分はその少年には嫌われている、まではいかないかもしれないが未だ警戒を解かれていなかった筈なのだ。
ゆくゆくはこんな関係を望んでいたのは否定できないけれど。
もう一度少年が名前を呼ぶ。その時やはり違和感を覚えた。

あの子はこんな媚びた目をする子じゃない。
甘く名前を呼ばれる関係でもない。
少年はいくらこちらが笑いかけても、心の奥底の警戒心は解かなかった。気まぐれに餌を貰う野良猫のようだと思っていた。
普段つんけんしている野良猫が少しずつ絆されてゆくのが楽しくて、
「帝人くん」を呼ぶ。
これはあの子じゃない。


……やさん、
……ざやさん、
……いざやさん、

「臨也さん!」
「!!」
「珍しいですね、あなたがうなされるなんて。」
「帝人くん……?」
「はい?」
「本物?」
「へ?まだ寝呆けてます?それともついに頭イっちゃいました?」
「わお毒舌。本物の帝人くんだ、」
「なんでそこで喜ぶんですか!ついにマゾヒストに転生ですかおめでとうございます」
「いや…俺はどっちかっていうとサディストなんだけどなぁ」
「どうでもいいですその情報」

しれっとした口調。最近はこんな軽口を返してくれるようになった。滅茶苦茶警戒されてた当時に比べたら進展なんだろうけど。

「……愛が痛いよ帝人くん」
「安心してくださいそんなの込めてませんから」
「なんだかいつもより辛辣だね…俺まだ夢見てる?」
「現実を見てください臨也さん!」

夢の中の帝人くんは素直だったんだけど、やっぱり現実は厳しいか、心折れそう。

「夢、……僕はここなんだけどな」

「!帝人くん!?」
「へ!?」
「もしかして嫉妬?嫉妬なの?」
「ちちち違います!」
「夢に嫉妬するなんて可愛いなぁ帝人くん!」
「違うって言ってるでしょうが!」







▼ みかでれ。
拍手ログ『う』






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -