buriki
(ワイリーととあるロボット)



俺達作られたロボットは腕が吹っ飛んでも足がもげても、極端に言えば首のみでも核(コア)を破壊されない限りは今自分が有する人格というものは消えないらしい。
あの戦いのあと、ズタボロになって動けなくなっていた俺をドクターはこっぴどく叱った。損傷が激しく、どう考えても新規製作したほうがコストも削減できるというのにドクターは俺をわざわざ修復したのだ。
「状態はどうだ?違和感はないか?」
「は、問題なく。全く元のままです。」
修復し、メンテを重ね以前よりずっとピカピカになった俺を見てドクターは満足気に笑うのだった。アームパーツの関節を慣らしながら、ドクターに何故俺を直したのかと尋ねると彼は呆れたように、まるで当たり前のことを話すように
「馬鹿者。新しく作ってどうなる?ワシがもう一度お前と同じモノを作ったとて"お前"は帰ってこんじゃろ」
と宣った。だが俺は彼の言っていることがいまいち理解できなかったのだ。同じ素材、同じエネルギー、同じ量のメンテを重ねればそれは俺なのだ。何が違うというのか。
「おお、察しが悪いのぉ」
「ドクター、もう一度確実な説明を希望します。」
そう尋ねてみてもドクターは笑うだけで明瞭な答えを与えてはくれなかった。
「そんなに睨むでない。よぅく考えるがいい」
「ドクター、あなたに指示されれば俺はなんだってできる。しかし、」
「本当にお前は頭が固いのぅ」
「……。」
「はっはっはっ!お前さんの悩む姿は新鮮じゃの。これでワシは自立思考型ロボットのワンランク上を製作できたという訳じゃ。やっばりワシは天才じゃー!」
悩む、とは?
機嫌良さげに笑うドクターを見ていると何故?どうして?という疑問と、こうかもしれない、違うかもしれないという曖昧な思考に飲まれそうになる。"かもしれない"などこんなのロボットにおける思考回路を脱している。こんなのまるで、まるで人間みたいじゃないか。
「……ドクター、俺は欠陥品なのかもしれません。」
「なんじゃと?」
「今、俺の脳内回路が混雑しています。正当な思考ができていない。原因は不明。」
「はー、全くお前は本当に……、」
「?」
「大丈夫、お前は全くもって問題ない。むしろ優秀と言ってもいいかもしれんの」
「そうなの、ですか。こんなものが……」
「なに、心配なぞしなくても良い。それが悩む、ということじゃ」
「クリーンな思考が出来無くても良いのですか。」
「そうだ。お前はもっと悩み、多くのことに興味を持ち、己で考えろ」
「了解、致しました……。」
要領を得ていない俺を見て、ドクターはまた楽しそうにからからと笑うのだった。
問題ない。ドクターがそれを望むのなら俺はそうするまでだ。
またドクターは言う。俺が"悩む"ために。



「――考えろ。何のためにお前に心を入れたと思っている?」




ブリキノ感情ガ始動スル






▼ 誰という想定はあるのですが、あえて名前を出さずに。会話文の句点は意図的です。
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