【LOCK】





まだ蒸し暑い部室の片隅で汗を滴らせながら剥き出しの白い背中を舐め上げて。そのままうなじに吸い付いてやれば、嬉しそうに腰をくねらせて涙を流す水谷に胸の奥が満たされていく気がしてたまらない。
ちらりと目を向けた扉の窓ガラス端に映った小さな影に口端を持ち上げて。

「ああ。鍵、」

掛けてないかも、と囁いた言葉に腕の中の身体が僅かに強張る気配。それと同時に、中が収縮して埋め込んだモノが締め上げられる感覚。

「誰か入ってきちゃうかも、ね」

粘着質な音を立ててギリギリまで引き抜いた自身を勢い良く打ち付ければ、水谷の高ぶった先端から溢れ出た雫がスローモーションみたいにゆっくりと床に落ちていく。こんな酷いコトしてるのにちゃんと気持ちいいっていう証拠。

「っあ、ぁ、さか…ぇ、ぐち…っ」

湿った肌のぶつかる衝撃音に合わせて高く掠れた鳴き声がリズミカルに上がる。
さっきまではその声を抑えようとしてたけど、今はもう諦めたのか抑えられないくらい感じてるのか、いつもヘラヘラと締まりのない口はずっと開きっぱなしだ。

「オレは構わないけど」

水谷はオレだけのものなんだ、って他人に見せ付けるのはすごく気分がいいだろう。でも、それと同時にオレ以外の誰にも見せたくないとも思ってる。
所詮そんなものは行き過ぎて制御できなくなった独占欲が生み出した感情なんだろうけど。けど、やっぱり自分の中で納得がいかないのも確かで。

ああ、今オレすっげー矛盾してるなぁ。なんて、心の中で呟いてみても目の前の男に聞こえるはずもない。別に彼に聞かせるための呟きではなかったのだが、続かない言葉のキャッチボールを強いて意味の無い一方的な会話を繰り返すのにもそろそろ飽きてきた。

「っや……さか、ッ…いや、だ…ぁ」

ずりずりと自由の利かない身体を引き摺って逃げようと藻掻く水谷の腰を片手で押さえ付けて真っ赤になってる耳の裏側に唇を近付ける。頭の中に浮かんでいる単語はきっと水谷にとって効果は抜群だろう。

「水谷?“待て”は?」
「っ…!」

思った通りピタリと動きを止めた水谷の柔らかい髪を指先で梳いて「イイコだね」と褒めてやる。ご褒美、と下半身に回した手で震えるモノを握り込み少し乱暴に扱きながら耳先に歯を立てて、それから焦らすように重ね合わせた唇の隙間から差し込んだ舌先で口の中をぐるりと擽って水谷の気持ちいいところばかりを刺激してやると、後ろの穴をぎゅうぎゅうと引き絞りながら随分と濃い精液を吐き出した。
もしかして一人で処理してないのかな、なんて思ったのも一瞬で。辺りに広がる濃厚な空気が目の前の異常とも言える景色を鮮明に映し出して揺るがない。

「っんん、ぅ……ひっ、あ、ぁあっ!」

高く喘ぎながらまるで力の入ってない足をガクガクと痙攣させてイく姿は滑稽で、その色香に酷くそそられた。
程無く意識を飛ばした水谷のぐったりと弛緩した体を引き寄せてゆるゆると腰を動かしてやれば、閉じていた瞼をうっすらと持ち上げた水谷の潤んだ瞳が焦点の合わないままこちらを見据えた。

「水谷だけ気持ちよくなってズルイじゃん」
「ぁ、ぁ、は…んっ」

さっきよりも大きくなった水音がぐちゃぐちゃと部屋の中に響く。触れ合う肌は熱く湿っていて、その熱はまだまだ引きそうにない。腹の奥でぐるぐると渦巻く欲望を水谷の中に注ぎ込むために、しばらく蕩けきった肉が絡み付く感触の心地好さを堪能した。

「俺もまだイってないし、水谷だって……足りないでしょ…?」

言いながら汗で額や頬に貼り付いた髪を指先で丁寧に払ってやれば、こちらを見上げる水谷がフワリと柔らかく微笑んでから縋るように求めるように少しだけ嗄れた声で小さく小さくオレの名前を呼んだ。そんな不意打ちめいた可愛いことをしてくれる彼に例えようのない充足感を感じ、ドキドキと騒ぐ鼓動がスピードを上げたのがわかる。

ああ、だから誰にも見せたくないんだ。だから誰にも触れさせたくないんだ。だって水谷はオレのものなんだから、そう思って当然じゃないか。
ああ、ああ、いっそどこかに閉じ込めて鍵を掛けて、ずっとオレの、オレだけの傍に置いておけたらいいのに。

人としてアウトであろうそんなことを考えながら、オレは目の前で艶やかに光る水谷のうまそうな唇に誘われるまま勢いを付けてかぶり付いた。





END.
20100609
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栄口くんは水谷くんが大好きで、水谷くんも栄口くんが大好きなんだよっていうお話。栄口くんはヤンデレではなく、ちょっと黒いだけです。




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