【好き、すき、スキ】





佐伯の部屋の窓から見える景色が好きだ。夜の帳が降りてからはただ明るいだけの光のみならず、赤や青や緑など色とりどりのネオンがまるで宝石をばら撒いたようで美しい。

「綺麗だ…」

感嘆の溜息と共に零れた言葉に背後から包み込むように抱き締めてくる佐伯がぽつり、妬けるな、と呟いた。
目の前の窓硝子に映る彼の熱い眼差しから、それが冗談やからかいの意味を含むものではないことがわかる。何とも可愛らしい嫉妬ではないか。

「貴方の“好き”を独り占めできたらいいのに」

彼らしさの滲む最高の殺し文句が胸の奥にじんわりと淡い火を灯す。
馬鹿な奴だ。私の“好き”を全てやることはできないが“愛してる”はいつだってお前だけのものだというのに。

愛しさを乗せた唇の端を持ち上げ絡めた視線でキスを強請れば、低く掠れた声で名を呼ばれた後にゆっくりと彼の唇が降ってきた。

「ん、佐伯…」

佐伯はキスが上手い。頭より先に体が『好き』だと認識してしまうくらいに。
そんな甘く蕩けるような口付けに酔わされてしまえば、後は、もう。

「っぁ、佐伯、ッ…好き、好きだ、さえき…っ」
「ああ、俺も好きだ、御堂……愛してる」

流れて、流されて。追い詰めて、追い詰められて。溶けて、溶かされて。
浮いているような、沈んでいるような、ぬるま湯のような中で、ふたり。揺蕩いながら、重なる、だけ。





END.
20090916
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とある人と見た夜景が綺麗で。




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