いくら詐欺師と言われても、そりゃ人間なので不可能なことも世の中にはあるわけで、

この気持ちを簡単に隠せようものなら、神の子以上になれるだろう。


隠し切れない

(nb,side:N)


同じ部活。同じクラス。

こうなればイヤでも視線に入ってくる。同じクラスになってもっともっとブン太を知った。
今までそばにいたはいたが、全てを見られるわけではなかった。


…白状しよう。

丸井ブン太が大大大好きじゃ。

実を言うと、俺はブン太と付き合っているわけで、今更何を言う当たり前だと誰かが頭をポカリと叩くかもしれないが、

その…今までよりももっとずっとすごく好きになったと言えば理解してくれるかの?

ただ、不満もないわけでなくて…


「…丸井!」

もはや立海のアイドルと言えるブン太は誰とでもフレンドリーだから、そこがたまにチクチク。

「何?」
「あのさ、この前のさ…」

こんな感情、いらないのに。

「すげーな!!!」
「だろ?」

ブン太が好きだって気持ちだけでいいのに。

「そんでさ、」



コントロール出来なくなる



「ブンちゃん、ミーティング」
「え、あったか?そんなの?…って、おいっ!」

相手なんてお構いなしに、ブン太の腕を無理矢理引っ張って部室まで。
部室に近づくにつれて罪悪感。何やっとるんじゃ。

「…ブンちゃん、」
「………31な」

部室に入る前にピタッと止まって振り返ると、いつも通りのブン太。無駄に安心。

「返事は?」

誰もいないことを確認して、軽く唇を重ねるだけのキス。

「…おまっ!」
「返事代わりのちゅう」

ブン太は呆れたのか溜め息をついて、いきなりクスクス笑い始めた。

「可愛いとこあるんだな、お前」
「………」
「俺はお前にいつもヤキモチ焼いてるけど、仁王も焼くんだな」

お互い様だと笑うブン太が自分よりも大人びて見える。

「……ブン太」


ブン太の笑顔が全て自分に向けられればいいとか

ブン太のトクベツになりたいとか


そんなことはもう、(今は)どうでもよくって


ただただブン太のことが



「好いとうよ」



それしか言葉で表せなかった。


「……俺も、好き、だぜ?」


ヤキモチなんて子供っぽい
だからせめて君が好きだと
何度も言わせて





 
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