「におー」

「何じゃ」

「バトエンやろ、バトエン」

「それ終わったらな」


今日は期末テスト前の日曜日、俺と丸井 は珍しく必死で勉強会中である。あ、ち なみにバトエンってのは何か鉛筆転がし てバトル的なのするアレね。俺今どきあ んなモン持ってないんじゃけど。 ぶーたれた顔してまたノートに視線を向 けた丸井を見て、俺は今日何度目か知れ ない溜め息を吐き出した。

Sundayが
無駄になるナリ
勉強会

……雅治心の俳句。 なのに何故こんなことをしているかとい うと、話せば長いことになるわけでもな いが昨日の部活のことだった。


『仁王ー』

『何じゃ幸村……』


満面の笑みの幸村が顔を近付けて話し掛 けてきたのだ。顔近付けなさんな、笑顔 怖い超怖い!

『もうすぐテストだね。ところで、仁王 丸井赤也の3人に共通してることって なーんだ』

『……えーと』

『そう、馬鹿ってことだよね』


俺は答えてないのに幸村は勝手に答えを 言う。あん時涙で目の前が霞んでたのは 気のせいじゃないだろう。俺馬鹿じゃな いもん、成績は中の上から中の中くらい じゃもん。


『俺より遥かに馬鹿だろ。それで、特に 丸井の数学がひっどいんだよねー。だか らこの土日で』


最悪仁王レベルまで丸井の数学を引っ張 り上げてやってね、よろしく!

魔お……幸村は俺の話を聞かずこう締め 括ったのであった。週7で練習入れてる もんだから、部員の成績が悪いのは部活 のせいだと言われるんだと。確かにそう なるのかもな。てか今思うと中の中な俺 より成績優秀な幸村サンが教えた方がい いんじゃないのか。

何か納得いかんが、そんなわけで勉強会 with丸井in俺んちが開催された。

「のう」

「……」

「のう丸井ー」

「……」


「何度やっても√287/61になる!」と うん うん唸る丸井のノートをちらりと見る と、全く違う計算式が書いてあった。 てか答え見て式間違ってるかもとは思わ んのじゃろうか、少なくとも俺はそんな 答え見たことがない。


「ブン太ー」

「……」

「ブーンちゃん」

「……」

「ブタ」

「だああちくしょー!うるせーぞ仁王、 集中できねーだろぃ!」


怒鳴り散らす丸井のノートをつつく。お 前それさっきバトエンやろとか言ってた 奴の台詞じゃないだろうが。

テストの前になるとかならず数学教え てーって泣き付いてくるから(まあ魔…… 幸村の命令もあるけど)教えてあげてるの に何なんじゃその態度。雅治泣いちゃ う。けど優しくて強い俺は負けない。


「お前さんが頑張ってるのはわかるぜ よ、ただな」


この式間違っとるぞ。と俺なりに優しく 笑って言ってやったら何で早く言わない んだよぅって今度は泣きそうな顔で言わ れてしもうた。

俺別にコイツに変な感情は抱いとらんけ ど、こういう表情がコロコロ変わるとこ ろとか、ちょっと可愛いと思う。うー ん、何てーの?弟みたいな。面倒見な きゃいけない、みたいな。


「もうやだやる気無くした」

「ちょ……」


丸井は机にだらりと伏した。 それは困る。m……幸村に『最低ノルマ は50点ね、出来なかったら2人ともメ ニュー3倍』って脅さ…頼まれとるから の。 だが俺に焦りは許されない。


「まーるいっ、この問題あと5分で解け たらガムよりどり1ダース奢ってやる」

「ぅえ?」

「頑張る丸井に優しい雅治君からのご ほーび」


そうやってやると一気にやる気を取り戻 す丸井。ほーら、丸井の扱い方なんて簡 単簡単。 無駄になった計算が長々と書かれたペー ジをめくり、さっきよりも真剣に問題を 解き始めた。計算スピードと正確さは さっきの比じゃなか。

ああまずい、このままじゃ5分以内に解 き終わっちまいそうぜよ。取り敢えず先 月のバイト代がまだ残っていることを祈 ろう。



 
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