ひざ枕 ぱっと上を向けば嫌でもただただ目の前の風景見ている仁 王が目に入る。下から見る仁王の姿はどう見ても大人で、第 二ボタンまであけられたワイシャツが妙に色気を出していて る。俺と同い年とかまじで考えらんねぇ。「何じゃ、ブンちゃん」 「別に」 「そんなに見つめられたら照れるナリ」 「…きも」 「ブンちゃん、ひどーい」 わざと女の子のような黄色い声を出したけど掠れていた。 でもこんなハスキーな声好きかも。昼の陽気にそろそろ思考 がふわふわとしてきた。仁王は未だに目の前の風景を見た り、空を見たりしているからこのまま重力に任せて瞼を下ろ してしまっても気付かれないだろう、と思った時だった。う つらうつらする意識のなかで嫌にはっきりとぴろりーん、と いう音が耳に入ってきたのだ。 「お昼寝ブンちゃん激写」 「今の消せ、すぐ消せ!」 「嫌じゃ」 「消せって言ってんだろ…」 「ぶえっくしょい!」 「………ぇ」 顔が冷たかった。まばたきをすると仁王が照れながら鼻を 啜っている姿が目に入った。何照れてんだよぃ。照れる前に 俺の顔面に飛んだ唾を拭きやがれ。俺が眉間に皺を寄せたの と同時に視界に仁王の赤い携帯がちらついた。しまった、と 思ったときにはすでにライトが光ってまた軽快な電子音が 鳴った。 「俺、ブンちゃんずかん作ろうかな」 「お前まじ死ね」 |