神奈川県立海大附属中学校3年B組。 俺こと丸井ブン太が勉学に勤しむ教室で、一際目立つアイツ。そ れはきっとアイツの頭が人より低い位置にあるせいで。 それに気づいた教師がその銀髪をくしゃりと歪ます。 むっくりと起き上がった仁王は不機嫌そうな顔 でこちらを向い た。

ばーか、と口パクで言って笑うと仁王もまた薄く笑う。 前に向き直す仁王の銀髪が揺れながら太陽の光を反射して、キラ キラととても眩しかった。

顔が熱くなるのが手に取るようにわかって更に熱くなる。なんと いう悪循環、苦い笑みが思わず零れた。

最初は意識なんてしてなかった、と言えば嘘になる。 ただ認識が違かったんだ。 何もかもが正反対な俺、例えば燃えるような赤い髪とアイツの透 き通ような銀髪とか子供っぽい俺の性格とアイツの妙に大人っぽ い性格とか。そんな俺らだから絶対相容れないと思ってた。 逆に変な敵対心を抱いていたぐらい。 なのに今ではアイツの隣が心地良くてアイツの笑顔を見ただけで 胸がきゅんってなる。 仁王は男なのにバカみてえ、って思ってもこの感情をとめられな い。

それくらいいつの間にか仁王が大好きになってた。 いや、もしかしたら最初から好きだったのかもしれない。 だからアイツのこと目で追っかけてアイツの一言に いちいち腹立て、でもアイツと仲良くなりたくて… うわ何それ俺かっこ悪ぃ…!

にやける口元を片手で隠し仁王を見やると、カチッと目が合い速 まる心音。

ああ、駄目だ…もうアイツから目が離せない。


「すき」


小さく動かした唇を見て、仁王が微笑んだ気がした。



目を離せない


(わかっちゃった、) (仁王も俺が好きなんだ。)


 
- ナノ -