しりとり


それはささいな楽しみ。

ようはつまらない時間をいかに楽しく過ごすかという問題の答え。

「次、あ」

「あ?あー…アップ!!」

「ぷり」

「リップ」

「ぷり」

まさにコンチクショウ。

いや、俺の回し方も最高なんだが…もはやここまで来るとウザイかな。

「リスク」

「クーピー」

「ぴよ」

「!?」

これこそしてやったり。

俺は笑顔でピースを向けた。

「ちょ、ブン太…俺の台詞…」

「ぷりばっか言ってるからだろぃ。」

大嫌いな数学の授業に窓際の一番後ろに座る俺はその前に座る仁王としりとりをする。

いつも数学の時間になると唸り声をあげていた俺に仁王が提案してきたのだ。

『数学ん時はしりとりしながら授業受けちゃるけん、毎回後ろで唸りんさんな。』

はじめは先生にバレたら、とか考えてたけど今は気にしてない。

テストも仁王に手伝ってもらってるから大丈夫だし。

「よくも俺の台詞を、次『お』」

「俺だってにおと同じこと言いたい時もあんの、次『の』」

ガンッ

俺が言い終わるのとほぼ同時に仁王が机に頭をぶつけた。

勿論、クラスのみんなは一斉に俺らの方を見る。

いやいやいや…仁王君よ。

何してくれてんだい?

うわって顔しながら仁王を見たら、俺的危うしな眼をされた。

嫌な予感しかしない。

「こら、仁王と丸井はまたしりとりかっ!?」

先生がこっちに気付く。

「せんせー、俺じゃない!!におが勝手にしたんだぜぃ。」

責任転嫁。

まぁ、効果はないんだが。

「ちゃんと真面目に授業を受けろよ、仁王と丸井は。」

若干というか確実に先生は諦めたように言う。

仁王は机に頭をぶつけた、基突っ伏したまましりとりを続ける。

「残りの授業もしりとりでうけるん?…終わってしもうたけど。」

『ん』がついた。

けどしりとりは終わらない。

俺は笑顔で答えた。

「あったり前じゃん!!…あ、俺も『ん』」

仁王が顔をあげて「はじめから。」と仕切り直す。

終わりを始まりに置き換える。

終わらないしりとり。

しりとりが終わらないから

ずっと楽しいんだ。


end...

 
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