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フィンガーティップ・ロマンチカ




柳の指先が滑らかに動き、針と糸で布を縫い合わせていく。
「柳って何でもできるんだな」
そう言うと柳は俺のユニフォームを繕う手を止め、「そんな訳ないだろう」と笑った。

「それにしても、何故破れたんだ?」
理由も話さずに押しかけたせいか、柳の瞳はまっすぐ俺を捉えて説明を要求した。
柳はすごく優しいけど、幸村くんみたいな雰囲気がある。
きっと、優しいだけじゃ赤也をあんなに上手く制御できないんだろう。

「何処かに引っかけたのか?」
「あー…そんな感じ」
「…余程の事がないと破れないぞ」
引っかけたのも確かに事実だけど、それだけじゃない。
ドアのところで引っかけ、前に行こうとして体勢を崩し、体重でユニフォームが引っ張られてビリッ、という具合である。
それを見た仁王が吹き出したことは忘れまい。
「なあ、柳」
「ん?」
「柳って、本当に何でもできるよな」
「それはさっきも、」
「知ってる」
「俺には、出来ないことの方が多いぞ」
「ふーん…」
口の中に飴を入れながら相槌を打つ。
「あ、食う?」
「え?」
「はい口開けてー」
「ま、っ…」
丸井、と言いかけた柳の口の中へ、咄嗟に飴を放り込んだ。
「美味いだろぃ?」
「……甘いな」
「…柳」

手元に視線を落とした柳がもう一度顔を上げる。
片手で肩を引き寄せ、唇を重ねた。
口の中に広がるイチゴ味がやけに甘い。
柳と指先が触れ、絡まった。


end



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