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夏の夜の見果てぬ夢ぞはかなかりける(R-18)




時計の針は、夜の一時を指した。
だが、そんな夜中になっても俺はまだ寝つけていない。
眠れないくらいなら構わないのだが、その覚醒した脳で考えてしまうのは全て蓮二の事だった。
電話でしか会話をしていない最近、会いたいと思う気持ちは募る一方だ。
こうして一週間顔を見ないだけでも、何ヶ月も離れているような気がしてならない。
それで瞼を閉じて視界を真っ暗にし、枕に顔を埋めた。
暫くそうしていると意識が段々薄れ、やがて完全に眠りに落ちた。



夢だろうか。
俺の上に跨がっているのは何故か蓮二で、彼が着ている浴衣ははだけている。
紫紺の浴衣から露出した白い肩と浮き出た鎖骨に、小さく唾を飲み込んだ。
「……どうしたんだ」
そう訊くと蓮二は口元だけで笑い、俺の着ている浴衣を捲った。
「弦一郎……」
普段よりも艶を帯びた声が、その口から発せられる。
そのまま体を下にずらし、蓮二は俺の股間に顔を埋めた。
彼がしようとしていることを察し、俺はがばっと上体を起こした。
「蓮二っ…!」
「……」
上を向いた視線が俺を捉える。
ゆっくりとした動作で肩を押され、俺は仰向けに倒された。
内腿を這う蓮二の指が俺の下着をおろす。
蓮二の髪を掴むようにして顔を離させようとするが、効果はない。
寧ろ行為を助長してしまったようで、蓮二の手の感触が直に性器に感じられた。
生暖かい舌に舐め上げられ、体が強張る。
「弦一郎っ…」
落ち着かない声で呼ばれる名前は、心地良かった。


一向に顔を上げない蓮二の頭をぐっと股間に押しつけると、陰茎が口蓋に当たったのだろう。体をびくんと震わせた。
「蓮二」
口と手を休めた蓮二を叱責するように名前を呼ぶ。
「んぅ、ふ、んんっ…」
眉根を寄せた苦しそうな顔がどうしようもないくらい好きで、その少し乱れた黒髪を手で梳いた。
「…もう、いい」
「ぁ、はあっ…」
素直に口を離して顔を上げた蓮二は、口の端から唾液と先走りの混じった透明な液体を垂らしている。
頬を撫でた指先でそれを掬ってやると、蕩けた視線が俺を見上げた。
「蓮二…」
「げん…ぃちろ…」
霞がかかったような声に唆される。
脚を開かせると、いとも簡単に性器が露わになった。
「はしたないな」
「…や、ぁ…」
陰茎を摩った指は、すぐに濡れそぼった。


荒い呼吸で忙しなく上下する胸の先に爪を立てる。
「ひぁ、ぁあっ…」
その痛みから逃れようとすれば、その分、快感からも遠退く。
蓮二は、両方を享受するしかない。
「痛いのか?」
「い、たっ…、あ、ぁあっ」
爪で乳頭を捻るように抓ると、上擦った声を上げた。
「痛いのは嫌か?」
「はぁっ、ん…」
「どうなんだ」
語気を強めて、指先に力を入れる。
蓮二の陰茎に添えた片手で、亀頭から更に先走りが滲み出てくるのが分かった。
「いやじゃ、ないっ…」
「なら、どう感じるんだ」
「やっ、ンァッ、あっ…」
「気持ち良いか」
「きもちぃ、いっ…」
「それが好きなんだろう」
「んあ、すきっ…は、ああっ…」
こうやって虚ろに肯定させては、偏った嗜好を染み込ませてゆく。
「ならば、優しくする必要は無いな」
元来、そんな気は毛頭ない。
「四つん這いになれ」
すると蓮二は四肢を床につき、こちらに尻を向けた。
宵と同じような色をした浴衣を捲ると、白い臀部が現れる。掴んで引き寄せ、後孔に自分の陰茎をあてがった。
「んあ、あっ…」
「欲しいか」
「…ほし、っは、早くっ…」
慣らしていないことを気にも留めず、蓮二はじれったそうに下半身を揺らした。
「やぁっ…ぁ、ぁあ」
蕾に当てた陰茎の先を、少しずつ中に挿入していく。
「っ、締めすぎだ」
「んんっ…ひぅっ、あ、ああっ…!!」
もどかしさを覚え、まだ狭い後孔に一気に自身を埋めた。
蓮二は弓なりに背を反らし、息を詰まらせる。
がくがくと、不安定に脚が震えていた。
それに追い討ちを掛けるように、腰を前後に動かして始める。
「やぁあっ…ひぃあぁっ!!」
蓮二の体から力が抜け、頽れる。
律動で全身を揺さぶられるままに、嬌声も震えていた。


「蓮二っ…」
「ふぁっ、ああぁっ…げ、んぃ、ちろぉっ…」
「痛くないか…?」
「へ、ぃきっ…ンンッ…も、っと、してっ…」
「そうか」
そんな意味を持たない問答を繰り返しながら、行為は一層激しさを増していく。
狭い孔穴が更に強く締め付け始めた。
イきたいのかと訊くと、蓮二は頷いた。
繋がった部分からの卑猥な音に感化され、自身の質量が増す。
俺は何度も前立腺を突き、蓮二の蕾は痙攣するように激しく収縮を繰り返して、二人とも今にも果てそうだった、その時。


俺の瞼が開いた。
天井を見上げていた。



「っは、蓮二…」
視線を周囲に移す。
うろたえつつも、部屋の中に蓮二はいないと悟った。
あれは夢だと知らされ、思えば普段と全く勝手が違っていたことに気付く。
それにしても、夢の中であった情交は、かなり一瞬に思えた。
現実でもそう長くは感じないが、更に呆気なく終わった気がしてならない。
俺がこうして蓮二と会えずにいる一週間に比べれば、所詮は夢の中に過ぎない逢瀬など、刹那に過ぎないのだろう。
額の汗を拭い、明後日の部活を待ち侘びた。


end




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