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心配性 (真柳)




先程から、蓮二は無言を貫いている。
聞こえるのはただ寝息のみ、その頬には涙が痕跡を残していた。
彼を訪ねたときにはこの状態が出来ていたけれど、起こして訊く気は更々ない。
ソファに身を預ける蓮二の寝顔を暇つぶしに、目覚めるのを待ち続ける。もし翌朝まで眠っていても、待つ分には構わない。

「弦一郎…?」
それから何時間か経過し、退屈に夢と現との間を意識が浮動していた頃だった。
蓮二の普段より小さく掠れた声に呼び戻される。
目を丸くしている彼に、俺がここにいる経緯をかいつまんで話した。
寝起きの上に混乱が重なって脳がうまく働かないらしく、蓮二は全てを理解出来ていないようだった。
それから、話を移す。
頬を伝っていた涙は、なぜ流されたのか。
蓮二は、俺を心配性と評した。それに反論の余地はない。心配性であるから蓮二が思うことを全て知りたいのだと、理由をつけた。
けれどそれを尋ねる前に、蓮二は無言で俺に寄り掛かってきた。
「弦一郎…」
そう呼んだ蓮二が、俺の服を掴んだ。
反射的に、その肩に腕を回す。
思っていたよりも小さい。
強く抱けば折れてしまいそうだけれど、強く抱きしめておかないとすり抜けて何処かへ行ってしまいそうな気もする。
どちらが良いかなんて、選ぶまでもなかった。



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