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One(R-18)




朝起きたら自分がもう一人横にいました。なんて、限りなく笑えない冗談だ。
「…え…?」
「ああ、起きたか」
状況が理解できない俺にそう言って笑う男は、誰がどう見ても俺自身なのだ。
他人の空似とは思えない。
そこで一つ、疑問に突き当たった。
「仁王、は…」
「さあな」
昨晩この部屋で隣に寝ていたはずの仁王がいない、というかこのもう一人の俺は多分、仁王の変装か何かだろう。
「仁王だろう…?」
「違う」
「でも…」
「蓮二」
自分の声で呼ばれた名前。不思議と違和感は無い。
すると、目の前の自分が距離を詰めてきた。
反射的に顔を背ける。
仁王がやる事とあまりにも酷似していた。
「に、仁王…っ」
「…違う」
そう言った自分に肩を掴まれて組み敷かれ、服を乱されていく。
仁王がつけた赤い痕を指でなぞられ、その冷たさに体が跳ねた。
「蓮二…」
「んっ…」
指が鎖骨を這い、首筋に上ってくる。
そのまま顔が近づいて、唇が重なった。
咥内を舌が蹂躙し、息が出来ない。
もう一人の手が俺の下着を下ろした。
「ふぁ、んぅっ…」
蕾に指を挿入され、突然の刺激に身を捩る。
それでも唇は解放されず、時折漏れる小さな声と粘着質の水音が聴覚を占めた。
唇が離れる。
その時、俺の蕾を弄る三本の指が前立腺を掻いた。
「…ぁあっ!」
俺の腰が揺れた事に気付いたらしく、彼はわざとそこばかりを刺激する。
「ここか?」
「ぃ、っ…ぁあっ、ひゃあっ…!!」
「よく締まるな」
「はあっ、んんっ…やっ、ぁあっ…」
「…もう良いか」
絶頂が近く、収縮し始めている蕾から指が引き抜かれた。
「や、だっ…なん、で…」
物足りなさと焦れったさに耐えかねて、もう一人の自分に縋った。
外見が自分であろうと本質は仁王のはずだ。
「蓮二」
「ん…」
「…妙な気分だ」
「何、が…?」
「自分を犯すことが」
「…ぁああっ!?」
仁王じゃないのか。そう訊こうと開いた口は、嬌声を発した。
突然の圧迫感と刺激に、もう一人の自分の服を掴む。
「っ、狭いな…」
腰を掴まれ、奥まで陰茎を挿入される。
「あっ、ふぁっ…んっ…」
「そんな顔をするな…」
俺に覆い被さった彼が腰を動かし、奥を何度も突き上げた。
「ひああっ!!んぁっ、はぁぅっ…」
「ここも感じるのか?」
「やっ、ぁあああっ!?」
不意に指先で乳首を抓まれ、その刺激で射精してしまう。
「随分と敏感なんだな」
そしてもう一人の俺は小さく笑い、律動を早めた。
「んあっ、やぁっ…!!」
強く揺さぶられ、溢れた精液が飛び散る。
「っ、中に出すぞ…」
「はあっ、んんっ…」
彼が射精し、動きが止まった。
でも、またすぐに腰を打ち付け始める。
それを続けて終に俺の意識が飛んだのは、体が白濁で散々汚れた後だった。


「っ、仁王…」
「やーっと起きたんか」
目が醒めたとき、隣にいたのは仁王だった。
何事も無かったかのように笑う彼に、体を起こして口を開く。
「あんな冗談は、もうよしてくれ」
「何の事か分からんのう」
「でも、お前が、俺になって…その、襲ったんじゃないのか?」
「あー、そういうプレイは思いつかんかったのう。新境地じゃな」
どうも、嘘を吐いているようには見えない。
じゃああれは、仁王じゃなかったのか。
ドッペルゲンガーとは言うけれど、まさか。
「何じゃ、難しい顔して」
「…何でもない」
性交の名残か疲労に襲われて再び横になる俺の隣で、仁王が小さく笑った。
そんな彼の真意は、結局誰にも解せないのだ。


end



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