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4 お膳立て




「……」
「……」
さっきから続く、無言の間が居たたまれない。
トイレに行った丸井先輩は帰ってこないし、副部長すら来ない。
「…あ、そうだ」
何か思い出したように幸村部長が口を開く。
「今日、蓮二休みだから」
「…朝いましたよ?」
すると、いつの間にか帰ってきた丸井先輩が口を開いた。
「柳なら保健室」
その後ろから、仁王先輩と柳生先輩が来るのが見える。
「熱があるみたいですよ」
そう柳生先輩が付け足して、ガムの包み紙を拾ってゴミ箱に捨てた。
「えー、マジっすか」
「残念だったのう」
「練習に身が入らねえだろぃ」
「そんなこと誰も言ってないっす」
ニヤニヤ笑う2人に背中を向けて着替え始める。
「あーあ、意地張っちゃって」
幸村部長の小さい呟きが聞こえた。
独り言かは知らない。


その日の帰り。
幸村部長に呼び止められた。
「蓮二の鞄、ロッカーに入ってるから持ってってあげて」
何で俺。
まあいいや。
「…分かったっス」
正直面倒臭いけど嫌とは思わなかった。
これが柳さんじゃなくて丸井先輩だったらとか、考えたくもない。
柳さんのロッカーはちゃんと整頓されてて、柳さんの匂いがした。
鞄を持って足早に部室を出る。


保健室のドアを開けると、誰もいなかった。
カーテンで仕切られたベッドが目につき、カーテンを開けて中を覗く。
「柳さん…?」
返事がない。
近付いてみると、柳さんが寝ていた。
心なしか、頬が赤い気がする。
「っ、ん…」
「…柳さん?」
起きたかと思ったけど違ったらしい。
柳さんの鞄を置き、保健室を出ようとした時。
「ぁ…赤也…?」
少し掠れた声に振り返ると、起き上った柳さんと目が合う。
いつも冷静で大人びている柳さんが、何処となく幼く見えた。






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