main | ナノ
不器用 (赤柳)




「柳さん、チョコ手作りがいいっす!」
何を言い出すかと思えば。
去年はまだ付き合っていなかったから赤也にバレンタインのチョコをあげた事はないし、そもそも作った事すらない。
世間的には、むしろ貰う側だ。
それでもこんな笑顔で言われると承諾してしまう俺は、やはり、赤也に甘いのだろうか。
「…分かった」
「本当っすか!?」
小さく頷くと、「約束ですよ」なんて指きりをさせられてしまった。


こういう時、姉がいるのが、唯一の救いだろうか。
友達に作ると言って、材料を買い込んでいたらしい。
手伝ってくれと頼むと、快諾してくれた。


「っ、痛…」
この一時間で三度目の怪我。
火傷はニ回。
姉の半ば呆れた様な目線が突き刺さる。
それでもどうにか完成させた事は、ほぼ奇跡に近い。


「あ、赤也…これ」
「本当に作ってくれたんスか!?」
「ん…」
「ありがとっス」
赤也の手に袋が渡る。
そしてあっという間に包みが剥がされた。
「おいしいっスよ」
「…そう、か…?」
すると突然肩を掴まれ、唇が重なる。
口内で赤也の舌が這い回った。
「っ、ん、ふぁっ…」
甘い味が充満する。
「柳さん、おいしい?」
「んっ…」
してやったり、という顔で赤也が俺の顔を覗き込んだ。
俺は、不意打ちの仕返しの意味合いも込めて抱きついてやった。


「柳さん可愛いー」
「っ、うるさいっ…」


end



Novel
Site top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -