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嘘吐き




「仁王」
「ん?」
「…呼んでみたかっただけだ」
色んなものを押し殺して小さく笑みを浮かべると、仁王の表情が僅かに揺らいだ。
「蓮二の嘘吐き」
「詐欺師に言われたくないな」
仁王は眉一つ動かさない。
その代わり、微かに唇が動いた。
「何て、言ったんだ?」
「嘘吐きは泥棒の始まり、言うじゃろ」
ほら、と仁王が立てた指を掴む。
「何じゃ?」
「迷信だな」
指から手を離すと、今度は俺の手首を掴まれた。
「仁王?」
「蓮二、この前より痩せたじゃろ」
「そうか」
「こっち来んしゃい」
「ん、」
手を引っ張られ、仁王の膝に座る。
「雅、治…?」
「蓮二」
「す、き…」
「知っとる」
「雅治、は…?俺のこと、好き?」
「好きじゃよ」
「んっ、ま、さ……」
そこはかとなく寂しくなって彼の胸に顔を埋めて抱きつくと、背中に手を回されて抱き締められた。
「蓮二」
「聞、いて…?」
「ん、何じゃ?」
「さび、しい…」
「そうか」
「一人に、なりたくないんだ…」
「知っとる」
「一人に、しないでくれ…」
そう言うと頭を撫でられた。
「蓮二はいつの間にそんな甘えたがりになったんじゃ?」
「…知らない」
「蓮二の嘘吐きー」
「詐欺師に言われたくない」
そう言って小さく笑うと、仁王が小さく笑い声を洩らした。


end



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