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躊躇の先 (ブン柳)




「腹減ったぁー」
「さっきから二回目だぞ」
「いいだろぃ、別に」
風船ガムが、パチンと弾けた。
丸井が不満そうに顔をしかめる。
「柳ー」
「ん?」
「今日クリスマスだろぃ」
「・・・え?」
「・・・え?ってお前・・・」
「忘れていた」
「意外と天然だよな」
クリスマスだなんて、頭の片隅にも無かった。
「・・・お前が期待するようなものは何も無いぞ」
「腹減ったぁー」
「三回目だな」
三回も空腹をアピールする丸井。
奢れという意味がこもっているのは分かっている。
「・・・何が食べたいんだ?」
「クリスマス限定のケーキ食べ放題」
「・・・いいよ、行こう」


そんなこんなで連れて来られたケーキ屋には、甘い匂いが充満していた。
「うまそー」
目を輝かせる丸井。
その皿の上には、既にイチゴのショートケーキやらタルトやらモンブランやらが乗っている。
「・・・そんなに食べるのか」
半ば呆れ気味に言うと、丸井はケーキから顔を上げた。
「違う。柳の分」
「俺は、別に・・・」
「これなんか好きそうだし持ってきた」
「・・・丸井・・・」
「いらねえの?」
「いや、貰う」
「ん」
丸井が俺に、ケーキを刺したフォークを差し出す。
口元にそれを持ってこられ、少し戸惑った。
「ま、丸井、それは・・・」
「いーから口開けろぃ」
「ん、ぁ・・・」
微かに口を開けると、そこにケーキを押し込まれる。
「うまい?」
「ん・・・」
もごもごと口を動かしながら頷くと、満足そうに彼が笑った。
周りの視線は、気にならなかった。


end



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