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雨傘(5500hit御礼真柳)




その日は、午後から土砂降りだった。
朝の天気予報では、降水確率10%。
いつになくそれを信用して出掛けたのが間違いだったのだろう。
「…困ったな。濡れて帰るしかなさそうだ」
「全くだ」
コートが使えずに部活は中止となり、昇降口に立ち尽くすのは俺と弦一郎。
何せ、急に雨が降り出したのだ。
周りには、鞄を抱えて走る奴、相合傘をする奴。
その一方で鞄から折り畳み傘を出して帰っていく奴もいる。
俺は傘など持っておらず、弦一郎も同様だ。
他人の傘を拝借する奴もいるのだろうか。
「弦一郎…帰ろう」
「…そうするしかないだろうな」
そして、歩き出した、正にその瞬間だった。
「そこにつっ立ってたら邪魔だよ」
身長高いんだから、と背後から声がした。
「精市?」
「それ以外に誰がいる?」
「…済まない」
弦一郎の声が尻すぼみに小さくなる。
「どっちの傘がいい?」
「…いいのか?」
「1人で2つ傘使うわけにもいかないし」
ほら、早く選んでよ、と差し出されたのは2つとも折り畳み傘で、片方は水色、もう一方はピンクだった。
「……これは誰の趣味だ?」
「さあ。学校に着いて鞄開けたら入ってた」
「蓮二、どっちにするんだ」
「…弦一郎は?」
「ああもう、面倒臭いな。はい、こっちね」
「…精市…これは…」
「不満?じゃあ返して貰おうか」
「いや、いい。借りる」
「そう。じゃあね」
「…ああ」
花が咲くように水色の傘が開き、曲がり角を曲がって見えなくなった。
「弦一郎?」
入らないのか、と言ってピンクの傘を差す。
一瞬迷ったような顔をして、弦一郎は傘に入った。
「…蓮二」
「何だ?」
「…この傘は精市の趣味なのか?」
「…違うだろうな…それより、早く帰ろう」
「ああ、そうだな」


翌日精市に傘を返すと、
「蓮二、真田との相合傘の感想は?」
と笑顔で聞かれたので適当にごまかしておいた。
そして未だに俺は、あのピンクの傘は彼がわざと持って来たのではないかと踏んでいる。


end

5500hitおまたせしましたー!
ジャンル・R-18指定等無かったので好き勝手やらせて頂いてしまいましたが……どうでしょうか…
若干不安。
苦情、お持ち帰りはご本人様のみで受け付けます。
それでは。



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