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I don`t know.




幼なじみにだって、分からないことはある。
それに、東京と神奈川で離れている。
結局俺は貞治のことを、知っているようで何も知らない。


「久方ぶりだな」
夏に会った時の彼は俺より背が高かった。
いつの間に伸びたんだろう
4年と2ヶ月、15日。
その間貞治は何を見て、何を知ったのか。
俺は、何も知らない。


携帯電話の、通話ボタンを押した。
「もしもし」
「…さ、貞治…?」
「蓮二?」
「…ああ」
「急にどうしたんだ?」
「…会いたい」
「会いたい?」
驚いたような口ぶりで、貞治が繰り返した。
「…いや…なんでもない」
とんでもないことを言ってしまったと気付き、慌ててごまかす。
それが通用しないと知って。
「何でもない訳がないよ。蓮二が嘘を吐いている確率、100%だ」
「……ごめん」
電話の向こうで、貞治はどんな顔をしているんだろう。
それも、俺は知らない。
「…さだ、はる…」
「蓮二?」
「やっぱり、会いたい…貞治に会いたい」
何て言って良いのか分からず、子供のように稚拙な言葉しか出てこなかった。
電話の向こうで、小さく笑う声がした。
「分かってるよ。俺も蓮二に会いたい」
その「会いたい」は、友達として会いたいのか、それとも。
「貞治…」
「何だ?」
「…好きだ」
俺のことが好きだから会いたいと思うのか、なんて訊けなかった。
でも、好きだと言いたかった。
幼なじみという立場は、近いようでとても遠い。
それに引っ越しも重なり、4年余りで彼との全てを遮断されたような気がする。
「…蓮二」
「さ…貞治…」
声が震えたのが分かった。
言うべきじゃなかったのかもしれない。
「俺も蓮二が好きだよ」
「本当、か…?」
「勿論」
「…好き、貞治が、好きだ…」
自分のとも彼のとも知れない言葉を反芻し、呟いた。
「知ってるよ」
電話口から聞こえてきた声が、「知っている」と言う。
小さく笑みを浮かべた。
「貞治」
「何?」
「俺は、知らなかった」
「それも知ってるよ」
そう言って笑う貞治の声に、俺も口元を緩める。
開いていた窓から入る風に、白いカーテンが小さく揺れた。





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