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噂と (赤柳)




※過去捏造



俺がまだ小学生だった頃。
一人の転校生が一つ上の学年にやってきた。
別に学年違うし興味なかったけど、その転校生の噂は俺の耳にも入ってきた。
それくらい、良くも悪くも有名だった。


「ホントだって、男か女か分かんねえんだよ」
「えー、マジかよ」
「だったら教室行って見て来いよ」
こんな感じで広まった噂のお陰で、その転校生(というか、柳さん)のいる教室の前には人だかりが出来ていた。


それから一ヶ月くらい経った頃。
俺が体育館倉庫の前を通りかかったとき、その中から破壊音と咳き込む声が聞こえた。
興味本位でドアを開ける。
「キモいんだよお前。女みてーな顔しやがって」
「オカマなんじゃねーの」
「うっわ、ホモかよ」


跳び箱の陰に蹲るおかっぱ頭の転校生。
確かに性別不詳みたいだけど。
「何やってんだよ」
正義感とかじゃないと思うけど、止めなきゃと思った。
「お前、切原じゃん」
「コイツ庇うとか、お前もオカマなんじゃねーの」
「うっわ、同類かよ」
「なん、で・・・」
唖然とした顔の転校生。
でもすぐに察したようで、近くにあったバスケットボールを俺のほうに転がした。
頭いいな、コイツ。
とっさにそれを拾って、転校生をいじめてた奴が反応できない内に投げた。
ガンッ、と音がして、壁に当たったボール。
跳ね返ってきたそれを拾った。
「や、やべえ・・・」
とりあえず、テニスやっててよかった。
「次は当てるよ」
「い・・・行くぞ」
意外と簡単に退散していく。
転校生は壁伝いに立ち上がり、溜息をついた。
「アンタ大丈夫?」
「ああ」
「いじめられてんの?」
「まあな」
「まあなって・・・」
「切原赤也、だったか」
「何で知ってんの?」
「体操服に書いてある」
「あ、コレ」
「まさか助けられるとは思わなかった」
「は?」
「ありがとう」
そういって笑った転校生はやっぱり女みたいで、俺は
「・・・女みたい」
とつぶやいた。
すると、転校生はまた笑った。


そしてその顔は、やっぱり女みたいだった。


end



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