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不完全な融合 (2345hit御礼仁柳)




仁王は、屋上が好きだ。
よく空を眺めてはシャボン玉を吹いている。
でも、今日はいない。
気まぐれな奴のことだから、何処にいるかも知らない。
知らなくていい。


俺も、屋上が好きだ。
屋上にいると、頭上を埋め尽くす空に融けていけそうな錯覚に陥る。
「さーんぼ」
「・・・仁王」
「一人でこんな所おるなんて珍しいの」
そう言った仁王が俺の隣に腰掛けた。
「・・・仁王・・・」
「ん?」
「・・・消えたい」
「消えたい?」
さして驚いた様子も見せず、仁王は俺の言葉を復唱した。
「なんでまた、そんなこと思うたんか?」
「・・・死ぬのは怖い」
「・・・ほう」
「だからいっそ、消えてしまいたい」
「あんま変わらんじゃろ」
爽やかな風が吹き抜ける夏の屋上と青空からすれば、奇妙な会話だろう。
無表情な仁王をよそに、俺は話を続けた。
「・・・ここの屋上から空の中に融けて消えるのも、なかなか悪くない最後だと思わないか?」
「悪趣味じゃ・・・それに」
「それに?」
仁王は一瞬躊躇うような素振りを見せ、言葉を継いだ。
「・・・新手の自殺願望にしか聞こえん」
「かもしれないな」
「蓮二・・・」
「・・・俺は、死にたいのかも知れない・・・」
「死んだらお終いじゃ」
ボソッと仁王が呟いた。
「消えるのならいいのか?」
「・・・消えてどうするんじゃ」
「・・・生まれ変わるのはどうだ?」
「結構な想像力じゃ・・・・・・でも、俺が蓮二じゃって分かる格好ならええ」
その時思った。
こいつは、俺が死んでも泣かない。
「じゃあ、女になって生まれてこようか」
「女?」
「そっちの方が今より都合がいいだろう」
仁王を見ると、無表情な彼の瞳が揺れていた。
「そん時は、楽しみにしちょる」
仁王が耳元でボソッと言い、屋上から出て行ってしまった。


俺の景色は360度、上も下も青空だった。


end
2345hitリクありがとうございます。
お待たせしました!
シリアス・・・・になってますかね?
ご本人様のみ、苦情等ございましたらいつでも大歓迎です。
お持ち帰りもご本人様のみで!
では。



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