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好奇心
たとえば。
今 本を読んでいる柳さんに悪戯を仕掛けたらどうなるんだろう。
きっと、笑って許してくれそうだ。
じゃあ、今 俺と付き合ってる柳さんに「嫌い」と言ったらどうなるんだろう。
どんな顔をするんだろう。
怒るかな。
泣くのかもしれない。
見てみたい。
「柳さん」
「何だ、赤也」
「柳さん、俺が柳さんのこと嫌いだって言ったら、どうします?」
柳さんの肩がピクッとなった。
「きら、い・・・・・」
それきり、柳さんは黙ってしまった。
そして、段々とその端正な顔が歪んでいくのが分かる。
込み上げる嗜虐心。
「柳さん」
追い討ちをかけるように訊いた。
「・・・俺の、せいか・・・?」
「・・・・・・」
意地悪して口を閉ざす。
「ごめん・・・・赤、也・・・」
柳さんの視線が宙を彷徨う。
「ご、めん・・・」
また謝って、柳さんが部屋を出ようとする。
「ちょっと、柳さん」
「・・・赤也」
「大好きっす」
「・・・」
「さっきの嘘っスから、嫌いじゃないっすから」
「・・・分かっていたよ」
「え?」
今、何て言ったこの人。
「赤也が嘘を吐いていることくらい、分かる」
だからあえて乗ってみた、と柳さんは笑った。
「本当っスか?」
「本当だ」
「・・・手強いっス」
そう言うと柳さんが俺の頭をくしゃくしゃと撫でるから、柳さんを後ろから思いっきり抱きしめてやった。
end
Novel
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