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記憶
今、俺の上に跨って酷く悲しそうな顔をしているのは蓮二だ。
そしてその手は、俺の喉元にかけられている。
「すき、だ・・・弦一郎・・・」
こんな体勢で好きだと言われるのはかなり変わった状況ではある。
「蓮二・・・」
「・・・もう、やだ」
「・・・何がだ?」
「全、部」
手が緩められ、蓮二が俺の上に倒れこんでくる。
シャツをぎゅっと掴まれた。
「弦一郎・・・俺が死んだら、泣いてくれるか・・・?」
「死んだら?」
「俺のために、泣いてくれるか・・・?」
「・・・ああ」
「・・・嬉しい」
「そうか」
「でも、あまり死にたくはないな・・・」
「それが普通だ」
「でも弦一郎が泣いた顔が見れるなら・・・」
存外、死ぬのも悪くないかもしれない。
そう言って、蓮二はひどく綺麗に笑った。
その時の俺は、どんな顔をしていただろうか。
蓮二の背後の窓から差し込む光が眩しすぎて、俺は目を瞑ったこと。
そして俺たちのいる狭い部屋の空間は傍から見ればとても奇妙な光景であり、穏やかなこの昼下がりには相応しくないものだったこと。
それだけ、記憶している。
end
読み返しても訳分かんなかったのでとりあえずUPしてみた感じです。
にしても短い・・・ちなみに、R指定にしようか迷いました。
どっちが良かったんだろう・・・。
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