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mellow melt




02/14 23:03
無題
from 柳蓮二
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今から会えないか。



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蓮二からそんなメールが届いたのは、夜の11時を過ぎた頃だった。彼にしては珍しいと思いつつ、着信履歴の一番上にある蓮二の番号へ電話を掛ける。
すると蓮二は、程なくして電話に出た。
「もしもし」
「蓮二」
「弦一郎…!」
「今から向かおうと思うのだが…」
「あ、ああ…。すまなかったな、いきなり」
「構わん。気にするな。…それで、どこに行けばいい」
「あ、いや、その…」
「ん?」
ジャケットに袖を通しながら、蓮二の返答を待つ。車のキーを掴んだところで、彼は言った。
「…実は、弦一郎の家の前に、来ているんだ…」
「…まさか、」
半信半疑で玄関へ向かい、ドアを開ける。

「れ、蓮二…!」
外には確かに、コートを着た蓮二が立っていた。
「弦一郎…」
「寒いだろう。上がれ」
白い息を吐いている蓮二を部屋に上げ、再びドアに鍵を掛ける。
「どうしたんだ、急に」
「……渡したいものが、あったんだ」
「渡したいもの?」
そう言われてみれば確かに、蓮二は小さい紙袋を持っている。
「…今日でなければいけなかったのか?」
すると蓮二は申し訳なさそうに顔を伏せ、コートの裾を握った。
「…どうしても今日の内に渡したかったんだ」
「そ、そんな大切なものだったのか」
「これ……開けてみてくれ」
言われるがまま、受け取った袋の中を覗く。中には、小さな箱が入っていた。
「…何だ?」
良いから早くと急かす声に、取り出した箱のリボンを解く。蓋を開けると、そこには小さいチョコレートが詰められていた。
「蓮二…」
「…今日は2月14日だろう。だから…」
「……呆れるな」
溜息を一つ吐いてそう言うと、蓮二はやりきれない表情で俺を見つめた。
「弦一郎っ…」
が、俺は言葉を続ける。
「こんな夜に歩いてくるなど…」
「しかし…っ」
「言えば迎えに行ったものを」
「え…?」
「特にこの近辺は人通りが少ないだろう。次からは連絡しろ、こちらから出向く」
「…弦一郎…」
余計な世話を焼いたかとも考えたが、蓮二は安心したように笑って頷いた。


「甘いか?」
「……甘いな」
「たまには良いかと思ったのだが…」
「そうだな」
俺が一つチョコレートを口にすると、蓮二は口元を綻ばせた。既製品とは言え、やはり嬉しいものなのだろう。
「蓮二」
ソファに並んで腰掛け、名を呼ぶと、ストレートの髪を靡かせて振り向いた。目が合うその瞬間を見計らい、俺は蓮二の後頭部に手をやって引き寄せる。そして息吐く間もなく、唇を重ねた。口の中で溶けたチョコレートが、彼の口内へと流れ込んでいく。
唇を離した後に甘いかと尋ねると、蓮二は顔を背けながら小さく首肯したのだった。


end



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