main | ナノ
13-1 半透明の




「いや、でも、可能性の話だぜい?」
あたふたと取り繕う丸井先輩の言葉は、俺の耳には遠く聞こえた。
「そう言っても、ほぼ100%じゃけどな」
「100%…」
ボソッと呟くように発せられた確率を繰り返す。
もしそうなのだとしたら、無理矢理に理由を付けた感情への説明もつくのだろうか。
仁王先輩に言われると妙な説得力があって、そうとしか考えられなくなってしまう。自分自身はどうなのか、主体性を失うばかりだ。
「赤也」
「なんすか?」
「お前はどうなんだよい。柳のこと好きなのかよ」
「……かも知れないっす」
まだ、そうだと言い切れる確信は持っていないけれど。
「なら、それで良いんじゃねえの」
「…プリ」
仁王先輩の分かり辛い感嘆詞も、同意として受け取る。
何も、今すぐ答えを急ぐ必要はないのだ。
とそこまで考えて安心してから、重大なことに気付いた。
弾かれたように立ち上がった俺に、二人は怪訝な視線を送る。
「ま、ま、丸井先輩っ!」
「なんだよ、急に」
「い、い今気付いたんすけど、や、柳さん男じゃないっすか!」
「……当然だろい」
丸井先輩の呆れるような言葉と、仁王先輩の溜息が重なって、部室の空気を静寂へ変えた。



Novel
Site top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -