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ストレプトカーパス(47000hit御礼 ブン柳)




※視点人物が、丸井→柳→丸井と移ります




「柳さーん!」
「赤也、どうしたんだ?」
赤也が柳に飛びついて、柳が満更でもないような顔で返事をする。
それはもう見慣れた光景で、仕方ないと割り切ったつもりでいたが、やっぱり気に食わない。
部活のみならず校内で会う度に柳に抱きつく、赤也の癖は何とかならないのだろうか。
そんなことを思いながら溜め息を吐き出すと、いつの間にか幸村くんが隣にいた。
「眉間に皺寄ってるよ」
「うわ、幸村くん」
驚いて一歩後ずさると、幸村くんは「そんなに驚かないでよ」と笑った。
「つか、なんで幸村くんB組にいるんだよぃ?」
「いや、ブン太が真田みたいな顔してるのが見えてね。…柳のことだろ?」
「ゆ、幸村くんなんで知って、」
狼狽える俺に、幸村くんは楽しそうに笑った。
「分かりやすいんだよ、ブン太」
「へぇ…」
曖昧に返事をしながら、柳と赤也を見やる。
あんなに懐く後輩も珍しい。
柳も嬉しいんだろう。
俺と二人でいるときより楽しそうかもしれない、そう考えて止めた。
「妬いてるんだろ、赤也に」
「……」
否定できず、でも認めてしまうのも嫌で、俺は口をつぐんだ。

すると、その時、真田が前を通りかかった。
「あ、真田」
「ああ、幸村。どうかしたか?」
「言い忘れてたんだけどさ…」

昼休みが終わるまで、あと十分もある。
幸村くんは真田と話し始めてしまい、とりあえず仁王を探す。
案の定、仁王は椅子に座り、何をするでもなく携帯の画面を眺めていた。
「仁王ー!」
「叫ばんでも聞こえるんじゃけど」
最後に一瞬だけ柳を振り返ってみると、目が合った気がした。




丸井は、仁王と仲が良い。
気が合うのだろうし、クラスも同じだ。
必然とも言える。
そんなことはずっと前から分かっていたのに、どうしても割り切って考えることが出来ない。

「仁王ー!」
「叫ばんでも聞こえるんじゃけど」
気だるい返事をする仁王も、丸井と喋っていると楽しそうだし、丸井もそうなのだろう。
確かに、丸井の楽しそうな顔を見るのは好きだ。
けれど、彼にそうさせているのが自分ではないということが、嫌でたまらない。
更に言えば、誰が悪い訳でもないのに、そうやって嫉妬してしまう自分も、たまらなく嫌だった。
さっき一瞬視線が重なった時、丸井は何を思ったのだろう。




「ブン太、お前、なんかイライラしてねーか?」
そうジャッカルに指摘されたのは、その日の部活の最中だった。
「え?どこが?」
「…いや、なんとなくだ」
「気のせいだろぃ」
「…そうか。なら、良いんだけどよ」

気のせいであるはずがない。
昼休みのことが、まだ頭をぐるぐると回っている。
それに、柳と赤也はダブルスを組んでいて、今まさに隣のコートで練習している。

「柳さん、今の!今の見ました!?」
「ああ、以前より上達したな」

端から見れば、付き合っているように見えるのは俺と柳ではなく、赤也と柳なのだろう。
それがなんだか面白くなくて、休憩になった途端、俺は柳の所に行った。

「柳、ちょっと」
「丸井…?」
不思議そうに俺を見る柳を、校舎の裏まで引っ張っていく。
部員数が多いから、一人や二人抜けても、真田と幸村くんくらいしか分からないだろう。

「丸井、どうしたんだ…?」
「柳」
校舎の壁を背にした柳の前に立つ。
「お前と付き合ってんのは誰?」
「…丸井」
「お前が好きなのは?」
「……丸井…だ…」
「じゃあ、なんで赤也にいつも構うんだよぃ」
驚いてか、柳が目を見開く。
「…違うんだ、丸井…赤也は、後輩だ。本当に、それだけなんだ」
「柳は、俺を嫉妬させて楽しいのかよぃ」
そう言って、言わなきゃ良かったと後悔した。
柳は、きっと謝るのだろう。
そんなことをさせたい訳じゃない。
けれど、次に柳が発した言葉は、見事にその予想と反対だった。

「…俺、だって、お前が…丸井が、いつも仁王と楽しそうにしているのを、平気で見ていられる訳じゃない」
眉根を寄せ、柳は一呼吸置いてからこう続けた。
「…丸井が俺といるときよりも笑うことも、それを見て嫉妬してしまうことも、…辛いんだ」
「……」
柳がそんなことを思っていたなんて知る由もなかった俺は、黙ったままだ。言葉が出てこない。
「…す、すまない…こんな事を言うつもりはなかったんだ…困らせるつもりも…」
「柳」
我に返ったように慌て、謝る柳の言葉を遮った。
「嫌だったんだろぃ、俺が仁王ばっかりに構うのが」
「…それは…」
「柳」
「…丸井…」
「俺のこと、好きか?」
「……好きだ…」
消え入りそうな声で柳が呟く。
照れているからか、その耳は赤く染まっている。
それを言うと、柳は頬まで赤くした。
そういえば、赤也と一緒にいて、柳がこんな顔をするのは見たことがない。
なんか嬉しくなって、柳を抱きしめた。
身長差については、今後俺が抜かす予定なので心配いらない。
柳の体温が、心なしか高かった。



end
47000打リクエストありがとうございましたー!
遅くなってしまい、申し訳ないです…。
ご希望に添えているお話になっていれば嬉しいです^^
お持ち帰りと、苦情・書き直しはリクエストを下さったご本人様のみでお願いします。

では、リクエストありがとうございました!!



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