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捨つる迄に(R-18)




会いたかったと言われて抱きすくめられ、悪い気はしない。俺を覚えていてくれたのだと、寧ろ嬉しくなった。
けれど、彼が望んでいるのは、俺の中の常識を根底から覆してしまう、そんなことなのだ。はい分かりましたと軽く受け入れることは出来ない。
ああ、そうか。
これは冗談なのだ。
そうでなければ、彼はこんな事を言い出したりはしない。
それにしても、俺のことが好きだなんて、冗談にしては少しきつくないだろうか。
「…あくと兄さ、」
「違うよ、蓮二」
牽制するような低い声に、不安がせり上がってくる。
全身が、硬直したように動かない。
「蓮二が、好きだ」
「……嘘でしょう」
口をついて出た一言に、背中に回された腕が力を増した。
あくと兄さんは何も言わない。
僅かに震えを帯びて俺を抱く手が、真実だった。


背中を預けた冷たい壁が心地良い。
熱を持った手が、顎をなぞって首筋へ下りてゆく。
緊張で指先が震え、あくと兄さんの服の裾を握り込んだ。
「蓮二…」
「っ、は…」
息苦しさに、深く息を吐き出す。
「可愛いな、蓮二は」
じっと見つめられ、視線を逸らして俯いた。
背後の壁に体温が移り、冷たさが失われていく。「あくと兄さん…」
飽きるほど呼んだ名前を、また口にした。
「やっぱり嫌、は無しだ。そう言っただろう?」
「はい…」
「聞き分けのいい子は嫌いじゃないよ」
嫌だと言うより怖いと言った方が正しいが、一度受け入れた手前、そんなことは言えない。
「…っ!」
シャツを捲られ、肌に触れた夜風の冷たさに肩が跳ねる。
少しだけ口元を緩ませて笑ったあくと兄さんの手が、俺の胸に伸びた。
「どうしたんだろうね、蓮二」
「はぁっ、ん…」
外気があまりに冷たかっただけで、気持ち良い訳ではない。寧ろくすぐったい。
けれど、彼の行為が、まるでそうであるかのような錯覚を起こさせる。
胸の先を指で摘まれ、さっきよりも呼吸が浅くなったことに気付いた。
「……感じてるのか?」
「そんな…っ、分かりません…」
「…そうか」
短い返答の直後、あくと兄さんの片手が俺のズボンのゴムに掛けられる。
そして、彼は断りもせず、それを引き下げた。
すとん、といとも簡単にズボンを脱がされ、露わになった下肢が震えていた。
「蓮二、怖いのか?」
息が詰まって返事をする余裕をなくし、こくこくと二度頷いた。
「怖がる必要はないな」
気持ちよくしてやるからと囁かれ、俺は三度目の肯定をした。


「ふ、ぅ、んんっ…」
「…口を開けないと息苦しいだろう?」
あくと兄さんの手が、俺の性器を擦る。
何度も扱かれた陰茎は既に勃起し、射精口からは透明な液体が溢れていた。
今までに感じたことのない、言いようのない感覚がこみ上げてくる。
「あ、あくと兄さん…っ」
「気持ち良いんだろう?声は我慢しなくて良いよ」
「やっ、ぁ、あ…」
亀頭を強く擦られて、しがみつくように彼の服を掴んだ。
「ああ、ここが感じるんだろう?」
「ふぁ、あっ、ぁあ…」
執拗な刺激に、先走りが更に流れ出る。
そんなところを晒していて、恥ずかしくてたまらないのに、何故か目を背けられなかった。
「もうこんなになってるよ、見えるかい蓮二」
「や、みたく、な、っ…」
「嘘だな。見てる癖に」
すべて見透かされたような気持ちになって、思わず頭を振った。
快感に、足がガクガクと震える。
「ん、あっ、ひぁあっ…!」
「ここは?」
不意に乳首を抓られ、声が大きくなる。
「はあっ、んぁあ…」
「蓮二は敏感なんだな」
性器への刺激は止むどころか、更に激しさを増した。
「ぁ、…あく、と…に、さんっ…」
「イきたい、か?」
「っは、…、きたぃ、…イき、た、い…」
訳も分からず、あくと兄さんの言葉を繰り返した。
張り詰めた陰茎は今にも射精してしまいそうだった。
「約束もしたしな。イかせてあげようか」
「あ、ふぁ…あっ、ぁああっ…!」
指先で器用に射精口をまさぐられ、陰茎が大きく脈打ち、吐精する。
痺れるような快楽。
「はぁっ、あ…」
力が何処にも入らず、背が壁をずるずると伝い、俺はその場に座り込んだ。
「蓮二」
「…は、い…」
あくと兄さんが屈んで、俺に目線を合わせる。そして、俺の耳元でこう言った。
「もっと、気持ちよくしてあげようか」
少しだけ残っていたはずのまともな思考は、どこへ行ったのだろうか。


end



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