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結局酔いつぶれた晴を俺のアパートまで車で運んでもらい、以前ここに泊まりにきていたころのような形で眠らせた。
朝、トーストをかじっていたら隣で寝ていた晴がのそりと頭をさすりながら上半身を起こした。

「ふぁ‥あれ……」
「おはよ」
「恭祐だ‥あぁ‥酔っちゃったんだった」

どこまで覚えてるだろう。
俺に好きって(その意味は考えないものとする)言ったのも覚えてるんだろうか。
でもこいついつも通りだし、まあなんでもいっか。

「恭祐、まだ朝だけどお風呂はいりたい、シャワーでいいから。だめ?」
「あー、いいよ、今日は」
「やったー」

‥忘れて、そうだよなあ。いや、あいつのことだから友達に好きっていうくらいなんでもないのかもしれない。
まあ俺にとってなにか不都合があるわけでもないし、別に良いんだけれども。

晴の分のトーストを焼いたりしていると直にシャワーから出てきて、マーガリンを塗っただけのトーストに感動していた。

「うまい?」
「おいひぃ」
「そっか」

口いっぱいにほおばる晴の頭をつい撫でてやると、晴は嬉しそうに笑った。

「ちょ、恭祐、ボサボサになるー」
「湿ってるー」

なんだろう、可愛い弟ができたような感覚かも。
俺は妹しかいないけど、弟欲しかったんだよなあ。


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