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「水は極力使わない。もったいないから。‥知らないなら言うけど、水道水ってタダじゃないんだぞ」
「へえ‥とても、変わったことをしているんですね」
「いや、別に変わったことでもないと思うが」
「わかりました、今日はお風呂は控えます」

ああ、わかってくだすった。良かった良かった。
服を取りに行った晴の背中を見送りながら、今日の晩飯のことを考える。
当然食べていくつもりだろうし、やっぱり金持ちだしあまり下手なものを与えるわけにもいかない。でも、いったい何を‥。

「恭祐さん」
「はい」
「御夕飯はなんですか?」
「あー‥晴は何がいい?」

って、聞くんじゃなかった。お寿司とかステーキとか言われたらどうすんだこれ。

「俺は恭祐さんがいつも食べているものが食べたいです」

‥言ったな?

「ほう、なるほどね、いいだろう。ただし飯を前にして文句は言うなよ?」
「はい!では御飯が運ばれてくるまで何かしてましょう」

わあ、目が輝いている。金持ちには貧乏アパートが新鮮すぎてお屋敷に見えたりするんだろうか。

「っつか、お前んちじゃねーんだから何もしないで飯が作られたり運ばれたりするわけじゃないんだぞ」
「あ‥そっか、そうですよね。そうなんですね」

大丈夫かなあ。

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