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「浮気したよ、俺にもなんかわかるかなって、おも、た」
「……柚麻」

若干呆然としつつ、鼻水を親指で拭ってやる。
考えてもみなかった、柚麻がだれか他の人のところへ行くなんて。有り得ないって、…いったい何を根拠にそんなことが言えたんだろう。
首筋に見つけた見覚えのない赤い痕を見つけた途端頭に血が登って、涙が出てきた。
きっと柚麻にもわかるよ、そう言ったのは俺だ。

「…でもなんにもっわかんなかったよ、全然たのしくない、ホッともしなかった。寂しいのも変わらなかったよ、竜也は、」
「………、」

袖でガシガシと目を擦るので止めようとしたけど、力が強くて止まらなかった。

「竜也は、俺と居るより、ああいうことしてたほうが、楽しいんだ。」
「…柚麻、違う、そうじゃないよ」
「うそっだ、だって俺はもう、今日みたいなこと、したくないっ…」

何も言えなかった。やっぱり呆然として、それから目元を押さえる袖から見えた手首を見つけてゾッとした。
無理に引き剥がして袖を捲ると、柚麻は弱く抵抗した。

「…柚麻これ、」
「っ…ごめ、なさ…だって、」

俺が見た左の手首は真っ赤で、というよりか、それを通り越して紫になっていた。細いかさぶたが所々についている。

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