出て行くことも(1/3)
そろそろ変えどきかな。
侑李が、なにかのパンフレットを読みながらそう言った。
「変えどき」
家のことだった。
「(買い替え?)ふざけんなこの、ローンが残ってんだぞ」
「違う違う、ぼくが、家を変えるの」
「?‥引っ越すってことか」
「うん」
ほう!と感心した反面、え、なぜ?とも思った。
変える必要がどこに。
今までもそうやって転々としてきたのか?
侑李が見ていたパンフレットはマンションやらアパートやらのものだった。
「どうした急に」
「ここにも一定期間お世話になったから‥」
「一定期間?なんか規則でもあんのか、もぐら界の」
「いや、ないけど」
「じゃあお前‥か、家族とかが決めたとか」
「いや、ないけど」
ないんかーい!
なにを基準にして一定期間を定めてんだこの!
「智也と仲良くなれて嬉しいけど、でも僕ももう独り立ちしなきゃ」
「…そうか」
なんとなくわかった。
一人暮らししたいんだな。
でもそれには少し早くないかとも思ったが、なんせこいつもぐらだし、まあなんとかなるんだろ。
でも、寂しくなる。
侑李がいなくなると。
飯は一人分で済むし、それによって食器洗いも、洗濯物も、無駄に散らかすやつがいなくなるから掃除も楽になって、
抱っこをせがまれ腰痛になることもなくなるし生活費も‥……あれ?
いいとこだらけじゃね?
なあんだ、なんだよこいつ、早く出てけ。
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