僕、もぐら(2/3)
「もう一度聞いてやるけどさお前の家、どこ」
「ここ」
「てめー」
ここは俺んちだ馬鹿やろー。
侑李に適当にセーターを被せていつまでも片付けなかったコタツにいれてやりながら、事情聴取。
蜜柑を渡したら皮ごとガブガブ食いだしたから俺怖かった。
「あーまいったな。ご両親心配してんじゃねえの。」
「あー大丈夫大丈夫!とっくに親離れしたから!」
あ、そう?
じゃあいいのか。
いいのか?
「じゃあボク、なんちゃいでちゅか?」
「5しゃい!」
のってきた。
馬鹿にして赤ちゃん言葉使ったけど嬉しそうに返されちゃった。
「ごしゃいでしゅ」
「わかったわかった」
うーんもしかしたらコイツ言葉が微妙に通じねえんじゃねえだろうな。
それとも凄く発育の良い5歳児なのか?
「ねー」
「あん?」
「智也っていうの?」
「え」
なんで知ってんだ。
聞こうとしたらコタツにおきっぱだった自分の名刺が目に入った。
なるほど。
こいつ文字読めるのか。
「智也?」
「はいはいそうですよ」
「おー」
こいつどうしようかな。
家に返したいけどここが家だとか言うし。ふざけてる。
「なあ、侑李お前、なんかお前の事教えてくれ。例えばほら家だとか、さっき何してたのかとか」
「家はここ…さっきは穴掘ってた」
いやいや
さり気なく家にしてんじゃねえよ
しかもなんで穴掘ったんだよ
お宝でも眠ってそうだったのかな?
「いい土だね」
「あ、そう?」
「少し食べちゃったけど…ごめんね」
「おー」
大丈夫かこいつ。
1つだけわかったけど話し合いするだけ無駄っぽい。
でもなー
どうすんだ。
侑李は2つ目の蜜柑に食い付きながらなんか言い始めた。
「ここ、僕の家にしてもいいでしょ?」
「何言ってんだ駄目に決まってんだろ」
「おー」
おーじゃねーよ。
断ってんだよ。
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