味噌(2/2)



「ねえ智也」

「あん?」

「箸がいっぽんしかないと、あんまりすくえなくてあんまりしょっぱくない」

「うまいか?」

「うまい!」


こいつ塩分不足なんかな。
食事には気を使っていたつもりだったが。

侑李は口をもにょもにょさせて味噌を味わってたかとおもうと、
やがて口元に指を持ってきてはウニョ、となにか口から取り出して小皿に貯えるのを繰り返してた。

き、きたねー。
このゆとり野郎。
あ、いやわかんねえけど。こいつ学校行ってんのかもわかんねえんだけど。


「てめーこのもぐら、何やってんだ」

「中にある砕けた大豆の破片を取ってんの。気にしないでいいよ」

「や、気になる。お前大豆きらいだったか?」

「好き、だからとっといてるんだよ。あとで食べるよ」


はー確かにこいつ、好物は最後までとっておく派だったか。
だからって何も味噌の中の大豆まで分別しなくたっていいでしょうに。

しかし大粒である。


「智也も味噌を食うかい」

「いや、いらんけど」

「ビールにピッタリだと思うけど」


おのれおんどりゃービールの味を知らないくせに。


「いやいい、ておい、俺の膝に乗んじゃねーよ」

「どうして?」

「足が痺れるから」

「やべー」


やべーまじやべーよ。だからどいておくれよ。
侑李は暫くもぞもぞして、きゅうにパタリと俺の胸でうたた寝を始めた。

智也が足、痺れると大変なのでどいてあげるね、味噌も残ってるし。よい、しょ。よいしょ。
あれ、力が入らん、味噌の食いすぎかも。ふぅ、はぁ、疲れた、もうだめ。
うんとごめんだけど胸をちょっと貸して。…はあ暖かい。おやすみ。


「てめーこのやろ…」


やっぱり俺は足が痺れた。
ちゃっかり背中を撫でてやりながら、でもお返しにあいつの残りの味噌平らげてやった。


end
大豆はたべてない。

*前

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