写真のひとり(2/2)



抱っこするときの侑李の力強さときたら、
振り落とされるとでも思ってんだろうか。

しかし俺もこの歳でまさかおよそ高校生の男子を抱っこするとは人生ってわからねーものだ。
なにが悲しくてこんなこと。


「前から気になってたんだけど、智也の、あれなんなの?」

「どれ」

「あれ、あっち。動いて……ここ、これ」


侑李が指さしたのは、本棚にある写真立てだった。
俺ともう1人、俺の姉が写っている写真。


「これは、写真っていって」

「わかるよ!誰?隣の‥」

「…………彼女」

「彼女!?」


嘘ついた。
こいつ騙されてやんの。
ぷっ。


「智也は彼女がいたの?」

「なんだよお前知らなかったのか…」

「い、いつから?」

「最初から」


さいしょー!
絶叫する侑李うるせえ。

焦ってる焦ってる。
正直、そんなにかとちょっと思うほどだ。


「…しらなかった」

「これを機に覚えてくれ」

「うん……」


あ、ネタ明かす機会逃した。

俺の肩口に顔を埋めおったので寝んのか、と思ったけど、なんかだんだんシトシトしてきた。
は?
シトシト?
ジメジメ?

はて?
とたん、グズ、と鼻を啜る音が聞こえた。


「え?おいもぐら、」

「…………」

「もぐら…いや侑李」

「…………」


このもぐら…まさか泣いている。え、なぜ?


「ちょ…人の肩で泣くな」

「……ぅ」

「あー、あのな、今の嘘、嘘だからな?」

「………う?」


うそ。
う、そ。
はっきりいったら肩口からやっと顔を上げた。
うぉ鼻水鼻水


「うそ?」

「これ俺のねーちゃんな」

「ねーちゃん…」

「そっくりだろーが」


そしたらどんどん侑李は元気を取り戻し、やあねーちゃん!と叫んで写真に片手をあげだした。
え、回復はや。


「じゃあ智也に彼女はいないの?」

「うっせーないねーよ。悪かったな」

「なんだ‥ビックリした」


俺だってビックリだわ。
ただの冗談だってのに。
まあ元気になったんならいいけどよ。

てか、なんで俺に彼女で、こいつが泣くんだ?


今日はもやもやと、複雑な1日なのであった。


end

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