09(2/2)

亮太side




色々考えた。

賢斗の事を、初めて沢山考えた。


どうやら俺は賢斗に辛い思いをさせてるらしかった。
迷惑で嫌な存在。

これから先それを改善する自信がないから、
俺は悩んで悩んで、一番賢斗にとって良いと思われる決断をした。
最後の気遣い。


そう思って電話をしたのに、どうしてか今賢斗は家にいて俺を抱き上げている。


「俺…絶対賢斗に嫌な思いさせる」

「ん…」

「どうして…?」


どうして戻ってきてくれたの。

無意識に、賢斗を逃がすまいと手に力がこもった。


「俺も、これからそれにどう思うかわかんないけどさ。
亮太の全部を、好きになりたい」

「ぜんぶ、…」

「そう。」


ぜんぶって、ぜんぶ?

そんな事できるの?


俺の心を読み取ったらしい賢斗が、「がんばる」と呟くように言った。









いつかテレビで観たような、可哀想な羊に俺はなりたかった。
そうなることが俺の生き甲斐にもなった。

でも、それを賢斗が望まないなら、
俺は欠点を直したくても直せない迷える子羊になろうか。





俺なんかと違ってどこまでも優しい賢斗に、泣き疲れた最後の力を振り絞って「おかえり」と言った。

賢斗は笑った。




(好き、という言葉が聞こえたのと同時に、小さな子羊は眠りにおちた。)



fin.

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