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何故だ。
いったいどうして。

保健室のベッドで横になる愁の寝顔を見つめながら思わず舌打ちをした。


愁が倒れた。

体育の準備体操の時にふらりと倒れ、急いで保健室に運んでいけば「寝不足ね」という先公の診断。
寝不足?こいつがか?

「ん…」
「!…、」
「ふぁ…あれ…?直樹…?」

目を覚ました。
途端周りを見回して、何時ものようにへにょりと笑った。
右頬のガーゼが歪む。


「お前10時には寝てるって、前言ってなかったか」
「え…?う、うん…だってねえ…」
「本当は、何時に寝てんだ?」
「え…」

愁が固まったのが見て取れる。何故。

「…じゃあ朝は何時に起きてんだ?」
「朝は、だから…」
「なんだよ」
「えっと、最近は…4時、とか…」
「4時?」

4時って、4時か。
夜は誰よりも早く寝て朝は誰よりも遅くまで寝てるという愁がか?

「直樹…?どうしたの…」
「…なあ、なんでだよ。お前嘘ついてたのか?」
「!…嘘じゃ…」
「じゃあなんで寝不足になんてなるんだ?」

ってなんで俺はこんなにイラついてんだ…
…いや、そりゃイライラもするだろう。
呑気にスヤスヤ眠ってそうな愁がよりによって寝不足で倒れたんだ。
寝不足って事は寝る時間が不足してたって事で、
…クソ。イライラする。
ただしそれは愁に、ではなく、寝不足の愁の様子に気づかなかった俺に、だ。

俺はずっと愁を見ていたつもりだ何もかもわかっていたつもりだアイツはそれで毎日をなんら変わらず幸せに過ごしていたはずだ、

「愁?聞いてんのか?」

―何故。

自分に対する怒りを愁にぶつけても意味がないって事くらいはわかっていた。頭では。
ふとした視線の先の愁はいつも通りのへにょりとした笑みなんて浮かべてはいなくて、ただ俯いて何か悲しそうに、困ったように眉を寄せていた。

ズキリ、と胸が痛む。


 

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