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「ばいばい。あの、いつもよりノロくてごめんね」

「いや……今日はよく寝ろ」

「うん。」


へにょり。
相変わらずの笑み。
ただそれがいつもと全く同じだと思うほど俺は愁の事知らない人間じゃなくて、
かといってそれがいつもとどう違うのかと具体的にわかるほどには愁の事を知らない人間だった。
ただそれは、認めたくない。


「明日学校休みだし、大人しくしてろよ」

「うん。」

「傷増やすなよ」

「うん。一日中雲を見てるよ」


一日中雲を。
愁の事だから本当にそうするかもしれない。今までだってそうかもしれない。
ただそれならどうしてそんなにいくつも傷ができるのか。
そこまで考える前に、愁はそそくさと家に入っていった。

俺はただ、空気を蹴って暗い道を歩く。


愁の事は心配だ。
正直、今すぐあの家から連れ戻してこようかとも迷っている。
俺は本当に愁の全てに、気づかなくてはならない何かに、耳を傾けなければいけないんじゃないか。

それは頭のどこかでわかっている。



帰り際、歩道の端にひとつ、
小石を見つけた。



end

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