真人と付き合い初めて二週間がたった。
大学では今まで通りお互い別の友達といる事が多いものの時間が合う時や宗介のバイトがない日などはなるべく一緒に過ごすようにした。

講義が終わると宗介は友達からの誘いを断り、あの日真人のスマホを見てしまった時のトイレに向かった。
真人との待ち合わせの場所だ。
こんな所を待ち合わせ場所にするのはどうかしてると思うが、わかりやすいしここは比較的人が少ない場所なのだ。

真人はトイレの入り口付近で壁にもたれていた。
宗介に気がつくとニッコリ笑って駆け寄ってくる。

「お待たせ」
「ううん!帰ろう」

外はもう薄暗い。
構内を出て大通りから一本奥に入った所でサッと真人の手を握った。
初めは緊張のせいかほとんど握り返してこず黙ってしまった真人も、今ではしっかり握り返していつも通り会話してくれるようになった。

「今日泊まっていい?」
「うん……そうだと思ったし」

真人は頻繁に泊まりに来るようになった。
実家は遠いので面倒くさいらしい。

帰りにスーパーに寄って、夕飯の食材を買う事にした。
店内に入ると真人はフラーっと一人でどこか行ってしまったが、これももう慣れた事だった。
いつもお菓子を持って戻ってくる。
何にしようか考えながら、とりあえず卵が切れていた事を思い出し卵コーナーを見ていると真人が何か持って戻ってきた。

「ご飯これにしよ」
「…餃子か」

真人が持っているのは餃子の皮。
という事は一から作るのか。
宗介が何か言う前に真人はさっさと餃子の皮をカゴに入れた。

「いいけど、作るの手伝えよ」
「うん。楽しいよね餃子作るの」

真人が笑うので宗介も頷いておいた。
確かにこうして一緒に買い物をして、帰ったら二人でご飯を作るって…夫婦みたいで、楽しいというかすごく幸せだ。

餃子に必要な物を買い足してアパートに戻ると、宗介は靴を脱いですぐベッドに駆け寄ってゴロンと横になった。

「ああ〜疲れた〜!」
「……おい、寝る前にやる事が…」
「宗介の匂いがする」
「………」

真人は宗介の言葉を遮って布団を嗅いで変な事を言い出したので、構わず夕飯の準備を進める事にした。
ローテーブルを片付けて餃子の材料を広げる。
ひき肉やニラ達を混ぜてようやく皮に包もうという所で、ようやく真人は起き上がって宗介の隣に座った。

「宗介」
「………」

真人は宗介の頭に手を回し、背筋を伸ばして宗介の頬にキスをした。
こういう時は甘えたい時だというのもなんとなくわかってきた。
宗介も餃子の皮に触れた手につかないように注意しながら真人の頭に腕を回して引き寄せ、しっかり唇にキスをした。
真人は自分からせがんだくせに照れて俯いてしまった。

真人ははじめ、宗介の事が好きで付き合ったわけではないと宗介はわかっていた。
明確に好きではなくても、付き合っていれば好きになる可能性があると思って承諾してくれたのだろうと思った。
実際、初めは何でもないような顔で宗介に好きと言ってきたり夜の誘いをグイグイして宗介を焦らせたが、少しずつ真人の態度にも変化があった。

キスをしてほしがったり、手を繋いだり抱きしめたり、そういう事を求める事が増えた。
宗介がそれに応えるとほんのり顔を赤くして、照れくさいような嬉しいような、そんな顔をする。

真人が少しずつ宗介を意識して本当に恋人として見てくれるようになるのが伝わって、宗介は嬉しかった。


「…早く手洗って、餃子手伝って」
「うん!」

真人はご機嫌な様子で台所へすっ飛んで行った。





「宗介って不器用なの?」
「いや……そこまで酷くもない…だろ…」

真人は餃子を作るのが案外うまかった。
対して宗介は、たまに皮を破いたり具の量がバラバラだったりで、真人のと比べると多少不恰好になってしまった。
正直宗介はここで真人に引けを取るとは思わず落ちこんだが真人は特に気にしていないようだった。

「ま、中身は変わらないしね。美味しいよ!」
「うん」

真人はホットプレートからわざと宗介の作った餃子ばかりを取って食べたので、宗介も真人の餃子を食べる事にした。
真人はいいお嫁さんになれるかもしれない、と宗介は柄にもなく思った。



シャワーを浴びて2人でベッドに入った。
宗介は向き合って何か話しでもしようかと思ったけれど真人は寝転んだままテレビをつけてバラエティ番組を見始めてしまったので、声をかけそびれてしまった。

ボケーっとテレビを見ている真人の髪を撫でる。
可愛いなあ。

宗介は真人と付き合い始めてから、真人のツイッターを覗くのをやめていた。
過去の複数の男と交わる動画を見てももうムシャクシャするだけだと思ったからだ。それにもう宗介と付き合っているのだから、見張るような真似をする必要はない。
真人は自分の物だ。




次の日は真人は午前から講義に出なければならなかったので、二人で朝ごはんを食べた後真人を見送ってやる。いつもそういう流れだ。

「いってらっしゃい」
「うん。…宗介、今日バイトなの?」
「そうだよ」
「そっか…残念。じゃ、また連絡するね」
「うん」

バイト辞めようかな。
真人が寂しそうな顔で去っていくのを見て宗介はそう思った。

二人分の食器を洗って、二人分の洗濯を回すとまるでもう結婚したかのようで嬉しかった。




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