宗介は真人に続いてシャワーを済ませた。
もちろんカーテンは閉めた。

髪を乾かして部屋に戻ると真人は窓際のベッドに寝ていたので、もう片方のベッドに寝転ぶ。

はあ。
真人にとってときめきのデートになったかは知らないけど、とりあえず平和に一日が終わってよかった。
明日は帰って課題を片付けて、夜はバイト…。

ぼんやり明日の予定を立てていると隣のベッドに寝てたはずの真人は起き上がって、向かい合う形で寝転ぶ宗介の足元に跨った。

「……?」
「ねえ、シようよ」
「しない」

おい、話が違うぞ。

下半身は真人が乗っかって身動きが取れないので、せめて上半身だけでも体をねじって横を向いた。

「なんで?俺上手だよ?」
「約束が違う…」
「はあ?約束なんかしてないし」

鬼か。
記憶をたどったけど確かに約束なんかしていなかった。

「別にこれからもしつこく追うような事しないよ?今日だけって考えれば楽でしょ?」
「いや、そういう問題じゃ……」
「じゃあ……やっぱ男は無理?」

宗介は真人のツイッターで見た動画を思い出した。
無理じゃない。
現に宗介は真人に性的な魅力を感じてしまっていた。

でもここで流されると自分もあの動画に映っていた、顔にモザイクがかかった男たちと同じになる。
それが宗介の心にひっかかっていた。

「男だからって事はないけど……でもやっぱり、今日はそういうつもりで来たんじゃないから」
「…そういうつもりがないのにデートしたの?俺宗介が何考えてるのか…わかんないよ」

真人は悲しそうに眉を垂らした。
体の関係を求めずにデートするってそんなに変な事だろうか。

「…真人とデートしたいと思ったから、誘っただけだよ」

この気持ちを、この…とても性に奔放な人間にわかってもらうにはどうしたらいいのか。

困っていると真人は少し笑って、ころんと宗介の隣に寝転んで腹に抱きついた。

「わかってるよ、言ってみただけ!宗介今、ビッチとは話が合わねえなって思ったでしょ」
「……エスパー?」
「いや否定するとこ!」

真人は宗介のお腹に巻き付いたままアハハと笑った。
笑顔が可愛い。

「でも今日は楽しかったなあ。宗介荷物持ってくれるし、優しいしドキドキした」
「…………」

そうはっきり言われるとくすぐったい。

「…俺も…男とデートするのってどんな感じだろうと思ったけど楽しかった」
「ドキドキした?ドキドキした!?」
「…うん……」

ニコニコ笑いながら至近距離で見つめられてどうしたらいいかわからない。
宗介はフウと一息ついて真人の髪を軽く撫でた。

「またデートしよう。誘っていい?」
「うん!」

そのあと少しの間他愛もない話をして、そのうち真人は宗介にくっついたまま寝てしまった。

ここで寝るのかよ。




翌朝、カフェで軽く食事を済ませて解散した。

宗介はその日バイトや勉強の合間に昨日のデートの事を思い出していた。
真人に振り回された所もあったけど楽しかった。
デートと言ってもホテルに行くまでは友達と遊ぶのとそんなに変わらない。でも確かにあれはデートで、宗介にとって真人が普通の男友達とは違う立ち位置にいる事もわかっていた。

その日の夜は早めにベッドに入った。
明日の講義は昼から。真人も一緒だ。

早く会いたい…。

ふと思い出して真人のツイッターを覗いてみた。
あまり見ないようにと思っていたけど…つい出来心で。

「…………は?」

思わず目を見張ってしまった。
最新の投稿は8時間前、今朝宗介と別れてからほんの3、4時間後だった。
いつものように誰かと絡んでいる動画。
ツイートによると友達と解散して暇してた所に連絡をもらって、昼からおっぱじめたらしい。

時間帯的に、友達とやらは宗介の事で間違いない。

「…………………」

確かに昨晩誘いを断ったし真人は溜まってたのかもしれない。
それに解散した後に真人がどう過ごそうが宗介には全く関係ないし、恋人でもないので何も言う資格はない。

スマホを閉じて枕元に放った。

イライラする。
なんなんだ。
しかもあっさり友達呼ばわり。
動画に映る男と同じになるどころかそれ以下の扱いじゃないか。

……いや、友達という事に間違いはないのだけど。

自分ばかりが余韻に浸っていたのだと思うとやるせない。




次の日講義が終わって帰ろうとすると、教室の出入口で真人に捕まった。

「宗介やっほ!」
「うん」
「…あれ?元気ない?」
「あるけど」

真人は少し戸惑いながらも宗介の後をついて歩いた。

「…うーん…まあいいや。じゃあね」
「…どこいくの?」
「いやあ。ちょっと遊びに」
「誰かと約束?」
「してないけどこれから探す」

いつもよりテンションが低い宗介から逃げるように背を向けた真人の腕を慌てて掴んだ。

「待て、約束してないなら俺の家くれば」
「……え?」
「来て」
「…………」

誰の所にも行ってほしくないと思った。

体の関係を持たないデートならしてもいいとか、友達だからとか、そんな甘ったれた事を考えていたのが間違いだった。
デートしたいと思ったのは友達だからじゃない。
また誘いたいと思ったのもSNSを見てイラつくのも…。

「宗介…何かしたなら謝る……」

原因がわかってないのに謝る真人にイラついて、腕を掴む手に力がこもる。真人



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