上(2/3)



愁のお母さんや、あと経済的な関係で愁は遠い実家に引っ越すことになったのだった。
学校はつまらない。
でも手紙はしょっちゅうくるし、(まだ1ヶ月しかたってないのに、だ)
愁が作った迷路やらが送られてきたりするから今のところは別段不満もない。

でもこうやって、また会えて良かったと、おもう。


「駅の近くなのか、家」

「ちげー」


ちげー?どこで覚えたんだそんな言葉。似合わないぞ。

それにしてもこいつ、さっきから歩くの早い。
俺の少し前を歩く愁は振り向きもせず。久し振りに会ったと思ったら随分せわしない。

駅の周辺は賑やかだったけれど、少し歩けばあっという間に人通りの少ない路地に入った。


「‥愁、おい」

「うわあ、びっくりしたー」


やけに早歩きな愁の肩を掴み、立ち止まって振り返らせた。
笑ってた。
へにょへにょ。


「直樹?トイレいきたいの?」

「いや、逆にお前が行きたいのか?歩くの、なんか早い」


愁は、いや〜とかあのね〜とか言いながら、もじもじし始めた。


「うれしいから」

「うん」

「うん。」


あ、それだけか。

なるほど、嬉しくて元気になってたんだな。
なんていいこ。

頭を撫でてやったら笑いながら子供みたいに視線をそらした。
それから、ぴょんぴょんと二度のジャンプを始めたのでかなり嬉しくなってきたらしい。

 

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