インコの声真似は、番の相手に親近感を与える為のテクニックだそうだ。


*ミラーリング効果*





俺には毎日のように可愛い言葉を呟いてくれる子が居る。

「スキダヨ」

「キレイダナ」









だがそれは…






「…ピーコ。ちょっと黙ってな?」

「…ピーコ、ピチャ、ダマッテ、チュ?」



うちのインコは喋る。そしてやたら口説いてくる。


普通インコが覚える言葉といえば「オハヨ」とかが基本なのだろうが、
俺の場合好きな人(写真)に呟いてるのを覚えられてしまい
たまに「アイチャンカワイイ」などと勝手に呟かれてる。これを聞くと悶死しそうになる。
しかもピーコという名だが、こいつは男だ。しょっぱい事この上ない。

居間で飼いたいと母さんに言うと「アンタが貰ってきたんでしょうが」と一蹴された為
俺は今日も自室でピーコに口説かれている。


最近は気をつけているが、真似られてると知らなかった頃は無防備に喋り、たまに愚痴りもしていた。
…ピーコは誰より俺の弱味を握っているのかもしれない。
帰ると母さんがニヤニヤしてると思えば、ピーコのせいだったり
あああもう恥ずかしくて思い出したくない…。

…だが、だからこそ、誰より可愛く
俺が唯一心を許せる相手。それがピーコだ。





その日もピーコの「オカエリ」を予想して扉を開けた。
だが。





「おかえり」

「……っ!?」


バタン


何だ。何だ今の。金髪の男が居た。は?

え?母さん俺に何も言わずホストファミリー始めた?それとも隠し子?まさか愛人?いやいや最近はお帰りを言う泥棒も居るかも…と思っていると背後の扉を叩かれる。
何故か俺の爪をつつくピーコを思い出す。
あれ、そうだピーコは?あいつ、知らない奴が来たら怯えんのに、


「まさき、ここあけて」


そこまで考えた所で声がして、思考が途切れる。
その声は若干母さんに似てて、鳥肌が立つ。え、何やっぱ隠し子?弟?金髪の弟かよすげえな!
頭は妙に回るがどこか空回り気味だ。黙っていると男が更に喋る。


「まさき、すきー」


今度は俺に似てる。怖い何こいつ怖い!
けれど、その縋る様な少し不安げな声に、つい扉に向き直ってしまう。

うるさい胸を押さえつつ、ゆっくり扉を開く。



「まさき!」


その途端、男が抱きついてきた。

直前まで俺を見詰めていた、鏡のようにどこまでも澄んだ瞳は
何故か目の奥に強烈に響いた。





「…お前誰だ」
「?おまえ、だれ?」

さっきからずっとこの調子だ。

何を聞いても、何故か聞き返してくる。
質問内容を変えてもやっぱり聞き返してくるから、余計ムカつく。

ピーコが無事か見たいのに見られないし。…こいつ、邪魔。

「おい、どけよ」
「どけよー」
何で繰返す。しかも何でいちいち困った顔をする。
…もしかしてこいつ、日本語話せないとか…?
目が真っ黒で顔は見れば見るほど俺似のそいつ。
けれど髪は綺麗な黄色。違和感。

「…わっちょあねーむ?」
「?ねむ?」

駄目だ。絶対意味通じてないこいつ。原因は俺の発音か、それとも英語圏じゃないからか分からんが
どっちにしろお手上げだ。
しかも顔立ちが俺に似ている癖に、困るたび絶対俺がしない様な表情をするから苛立ち戸惑い少し同情が入り混じって何か呆れの様な気持ちが湧いてきた。

観念し、言い方を変え訊く。

「お前の名前は」
「ぴーこ!」


……は?


いや…何で突然答え始める、何でそんな嬉しそうなんだと思うが
それよりも。


「…ぴーこ?」
「ぴーこ、なまえぴーこ」
「いや、お前何ふざけて」
「おま、ふざけ?」
「……」

言葉が通じるのか通じないのか分からん。
取り敢えず、質問を続ける。

「あー、ピーコ?その名前外国人か」
「ぴーこ、おれピーコ」

微妙にかみ合わんが、何とか自称ぴーこは今迄の不安げな表情から、満面の笑顔になる。

これが絶世の美少女ならともかくモブ一直線な俺の顔…とは思う…が。

俺の焦茶とは違う真っ黒な目。綺麗だが落ち着くその黄色い髪、
何より、鏡の中ですら仏頂面の俺には絶対不可能な笑顔。

魅せられ、のまれる。


…心を、許してしまいそうな。


「おれまさき、すき」
「……ん」



その後この義弟仮を落ち着かせた俺は

帰って来た母さんの「あら、ピーコまた出してるの?」という声で




彼が「義弟」でなく「飼鳥のピーコ」だということを知る。


そして、俺の2Pカラーとの奇妙な同居が始まった。










ピーコ・鳥:マサキが小1の時貰われる。
ピーコ・人:明るい。鳥頭。マサキをやたら真似る。
マサキ:無愛想。人に合わせるのが苦手で、トラウマがある。





・真似得意×真似苦手
・BL発展途上/バーズラブ





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