一目見てわかった、後ろ姿。
真っ昼間から住宅街の道ばたにしゃがみ込むしげるさんに忍び寄った


『なにしてるの?』


やっぱりしげるさんだった。
私の声に振り向いて見上げるしげるさんはいつも通り、何考えてるかわからない顔で
しげるさんの足下には一匹の白い猫がゴロリと横たわっていた。
本当に何してるんだろう


「死んでるの、こいつ」

『へぇ。しげるさんは
で、何してるの?』

「一匹で寂しそうだったから
居てやってる」



ふぅん。なるほど
興味は沸かないけれど、しげるさんが余りにも普通にそういうから私の常識や概念はあっさり崩れて、『ああそういうことなら』としげるさんと同じようにしゃがみ込んだ。

見ず知らずの二人に囲まれて、猫も驚いているだろう
しげるさんと私は何も喋らずに横たわる猫を見つめていた。

暫くすると、だいぶ近くのほうで「にゃあ」って声が聞こえたから振り返ってみれば4、5匹。猫がいるじゃないか



『この子の、知り合い?』

聞いても答える筈ない、猫だし
それどころか私達を軽く警戒している。横目で見たしげるさんは少し微笑んでいた


「よかったな。お前
独りじゃなくなった」

『...うん、よかった』



自然と口から出たの。
しげるさんが死んだ猫を見つめていて、穏やかな目で見つめていて

きっと羨ましかったんだと思う
確信じゃないけど、私達の後ろに並ぶ猫も目を伏せる猫を寂しげに偲ぶから



風が穏やかじゃないな。寒いな。家に入ろう。
そう言って腕を引いたしげるさんの顔がさっきより老けて見えた












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