『赤ちゃん出来たの』



目を見ずに言ったのは、何もかも。諦めているから
降ろすお金は私で用意しておいた。
彼に用意させるのは気兼ねしている訳じゃない。
責任なのだ、これは

どうせ降ろすのだとしても、せめて同意をとらなければ




なのにあなたったら
泣き出すんだもの。



「本当か...?本当なのか?」

『う、うん...』

「良かった...ナマエ、
ありがとう....っ!」



きつくきつく、鉄雄に抱きしめられて。首元の彼の香りを鼻にあてながら
ただただ放心気味に世界が変わるのを感じ取っていたの。
じんじんと疼く、まだ膨らんでいないお腹の上に手を乗せながら


その手は鉄雄の手で優しく覆われた。
今、やっと彼の目が見れて、その清く透き通る目を見れて


「ありがとう、ありがとう...!」





その時。初めて私は、ああ望んでいるのだと
新しい命の誕生を望んでいるのだと気づいてボロボロと涙が零れてやまなかった。
一瞬でもこの命を見捨てようとしていたことを恥じた。


ああ産まれるのね、なんて嬉しいの。なんて喜ばしいの。



優しく優しく、彼の手が私のお腹を撫でる度に何よりも大きな愛しさが膨らんでいく





「名前はどうする?男か!?
式は...いつ頃あげようか!
なあ、ナマエ。これからは
楽しくなるぞ、なあ!」

『ふふっ泣きながら
喜ばないでよ...馬鹿っ』




赤ちゃんが出来たと告白する前に見ていた雑誌は、不様にも床に捨てられたまま
世界は予測もさせてくれない。

その色にただただ圧倒され、幸せに心を奮わせるだけなのだろう、新しい命と共に...
















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