クリスマスだからって客が来るわけじゃない。
家も金も女も持たない奴は、外に出る気すら削がれてしまうんだろう
「お前は酒に逃げる系か」
『うっさいわね、私は
飲むしかないから飲んでるの』
呑むしかないってなんだよ。身寄りがないからからって自分の働いてる雀荘で酒飲んでたら店長困るぞ。
仕方がないから苗字の隣に腰をかけ、そこそこ高い酒を頼んだら苗字が煩ったげにこっちを睨んできたけど関係ない。
俺は俺で飲むだけだし
『...仕事は?』
「毎年こうなんだよ
休日なのに客が来なくて、
早いめに店を閉めてる」
『ふーん。暇なんだ、可哀想』
「バイト中酒のんでるような
奴に可哀想なんて言われたく
ないな。お前の方がよっぽど」
食ってかかりもしない。
グラスを開けたら、少し赤い目をした苗字と目があった。
『一条って...
睫毛、長いよね』
ああ、こいつは喰ってかかろうとしてるのか。俺を
分かりやすいフリしやがって凡人め...かと思う俺も苗字の高潮する顔から目を離せないでいる
「早くあがれよ、バイト」
『いよし、店長ー!
お先上がらせてもらいます!』
全く。世間の色にあっけなく染められちまったんだな、結局俺達は
2杯目を終えた頃、酒が回りよたつく苗字が出てきたからまあ肩でも貸してやろうかと席を立った