某日、午前10時24分パンタジア南東京支店。
『はじめまして!本日からこちらで働かせて頂くことになりました、秋月小百合です!よろしくお願いしますっ!!』
そう言って彼女は元気よくお辞儀をした。
お辞儀と同時に揺れるツヤツヤした長い髪。
まるで人形のように整った顔。
そして顔を上げた後にニコッと微笑む向日葵のような笑顔。
(こないな美人さん、本当にいるんやな…)
これが彼女に対する第一印象だった。
その日からというもの、なにをするにも小百合の姿を探し、目で追ってしまいこれが俗に言う恋ってやつかと自分の気持ちを理解するにはそう時間はかからなかった。
しかし好きになったからどうするというわけでもなく、想いを馳せる彼女を眺めながらあっとゆう間に3ヶ月が経った。
そんなある日のこと。
『あのー……河内さん…私の顔になんかついてます??この数ヶ月ずっと、河内さんからの凄まじい視線を感じて非常に働きずらいのですが…』
と、南東京支店にきてから早3ヵ月、だいぶ店にも慣れてきた様子の小百合が眉間に皺を寄せながら厨房のテーブルで頬ずえをつきながらボーッとしてた俺に問いかけてきた。
その言葉にハッとして眺めていたことを誤魔化すように頭を掻きながら
「あーいや、スマンスマン。今日もワイの小百合は可愛いなぁ〜〜〜って思って」
といつもの調子でオーバーリアクションを交えながら返答をする。
そう言うと彼女は少し顔を赤らめながら
『またそういうこと平気で…!河内さんのスケコマシ!!からかうのはやめてください!』
と言ってくる。
この反応がなんとも愛らしくて毎回ことあるごとにからかってしまう。
「そのわりには頬が少し赤いんとちゃう?」
そうニヤニヤ笑いながら言うと小百合は更に頬を赤く染めながら『ないです!!』と、頬をおもちのように膨らませながら怒る。
そんな顔も可愛いんだよな〜なんてことを考えながら「そんな顔したらせっかくの別嬪さんが台無しやで〜?」と彼女の頭をワシャッと撫でる。
はぁ……ワイは一体いつになったらこの気持ちを言葉にできるんやろか…。
『……河内さんってわからない』
「???なにがや?」
今までからかわれたことについて気に食わないといった感じだったものの、それはいつものことでこんなに何かを思いつめたような彼女の表情は初めて見る。
いけない、少しからかいすぎたか?
そう思い咄嗟に謝ろうとしたその時だった。
『私のこと可愛いって言ってからかったりするくせに私が困ってる時や悩んでる時は一番に助けにきてくれて…河内さん、本当は私のことどう思ってるんですか?』
意図していなかった突然の質問に咄嗟に聞き返してしまう。
「??今、なんて?」
そう聞き返すと「だからっ…」と少し恥ずかしそうに視線を下に外し、それからまた意を決したかのように上目遣いに見つめてきてさっきと同じ質問をしてくる。
その頬は心做しか少し赤くなっているように見える。
なんなんや?この状況は。
目の前の想い人の思わせぶりな質問に鼓動が一気に高鳴る。
彼女はなんでこんな質問をワイに?いつもからかってばかりだから嫌われたとでも勘違いしとるんか?
いやでも第一「私のことどう思ってる?」なんて質問、好きでもない相手にするか?いや、せェへんよな??
つまりこれは彼女からの遠回しの愛の告白…!!
男たるもの今言わないでいつ言うんや!
いけ!河内恭介!!男を見せるんやーーーッ!
生唾を飲み込み、意を決して口を開く。
「…前から言おうと思ってたんやけどワイ本当はおま『なーんてね!!』
………………はい????
『いつも私のことをからかってくるお返しです!!どうでした?私の名演技!!』
お返し???演技???
…ということはつまり………
「…小百合……お前、ワイの乙女の純情を踏みにじりおったな…!!!お前のせいで俺のガラスのハートは粉々やーーーッ!!」
『?????乙女の純情??やだなぁ河内さん、河内さんは男なんだからそういうなら"乙女"じゃなくて"乙男"ですよ〜!』
「せやったわ〜〜ワイとしたことがつい〜〜〜って!!!そういうことちゃうわボケ!!」
いつものノリでついノリツッコミをしてしまいハッとすると小百合は楽しそうに笑っている。
(ったく…少しでも両想いなんかと思ったワイがアホみたいやんけ…)
そんなほろ苦い想いを胸にまだ当分笑いが止まらなそうな彼女のおデコに「笑いすぎや」と軽くデコピンをした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーキリトリーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
河内、初めての夢小説。
河内は主人公と晴れて両思いになってイチャラブっていうのもいいけど、個人的にはひっそりと報われない片想いをしててもらいたいです。
*PREV END#
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