仕事は好きかと聞かれたら、この上なく、と答えるだろう。だってバイクは好きだし、広い世界を見ることもできるのがいい。風を切る感覚、大地の鼓動。舞い上がる砂塵と遠くなっていく街。それと。それと少しだけ、何でも屋という職業に近いから。

 俺は一体、どこまで俺なんだろう。何度目だろう、こんなことを考えるのは。だから根暗だと思われるんだ。仕事が終わったらいつもこうして悔やみ、答えの無い問答をする。せずにはいられないのだ。理由などとうの昔に忘れてしまった。嫌にもなる。そもそも、嫌になるだけの俺なんてあっただろうか。セフィロス、ザックス、エアリス。俺はもしかしたら、もっとたくさんの人間の一部からしかできていないのかもしれない。個性など、俺など、無いのかもしれない。俺は。

ドアがノックされる。3回。深夜1時を過ぎた静かすぎる俺の部屋にティファが湯気を立てたココアを運んできた。まだ寝ていないの?と聞かれたので少し考え事をしていたと言った。

「クラウドは小さい頃から悩んでばかりだね。それがいけないってことじゃないよ?でも疲れるでしょ。時々は休んで、悩み切ればいいと思う。ほら、凝り性だもん。クラウドは。」

ふふ、と笑うティファの言葉に少しの戸惑いと安心を覚える。差し出されたココアが甘い。

「そういうね、クラウドの全力で悩むところが私は好きなのよ。」

 ココアを渡したティファはそれじゃあおやすみなさい、と言ってすぐに部屋を出ていってしまった。

え?好き?今好きだとかそう言った単語が聞こえましたが、深夜だし、仕事に疲れた男の聞き間違いでしょうか。いやいや。これは現実だ。だって抓った頬が痛い。どういうことだ?そういうことだよな。だから、その、あの。愛か、愛なのか。愛でいいんでしょうか。

「…かなわないな。」

 さっきから(もしかしたら随分昔からかもしれないけれど)この部屋を包んでいた悲しみだとか苦味はすっかり無くなってしまった。まるで一瞬の閃光に消されまいと駆け足で逃げたみたいだ。その証拠に胸がばくばくと内側から体を叩く。愛。もしもたくさんの命を奪ったこの手にも幸せを掴むことを許されるなら、きっと彼女との幸福を握り潰さないに大切にする。願わくば、二人の道程に祝福を下さい。愛しいあの娘と一緒に生きることができるように。彼女の世界が終る時までもう絶望に包まれないように俺が全ての絶望を払いのけるから。

どうか、どうか。この重い暗闇を、一瞬で打ち砕いた彼女に祝福を。もうジェノバでもライフストリームでも神羅でもなんでもいいから!


ライクラブソング


これからもずっと一緒にいれたらいいのに!



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