※ゼロの世界から数百年経ってます。エースのみ記憶と魔力を持ったよくわからないパロディです。
1番の彼が女装しているのが許せる方のみどうぞ。




マキナの父親は大抵夜に仕事を終えて帰って来る。決まって厚いコートに、濃い血の匂いを纏わせている。極めつけはその分厚いコートの下は露出の高いランジェリーだけだということだ。女性ものの下着とベビードール。
マキナが金髪のチョコボ頭の男の存在を知っていたならばそれが風俗嬢から貰ったランジェリーだとわかりもしたが生憎マキナにはメタな知識など一切無かった。
その幼いマキナですらこの自分達を引き取ってくれた養父が生業を糧にマキナと兄であるイザナを育てているのでは無いとわかっていた。それが子供にもわかる位養父であるエースは杜撰な人間であったし、自分の正体や職業を隠すということもしなかった。


その反面、マキナとイザナの養父は優しく賢明な男でもあった。ただし、大抵の知り合い達は養父の事を思い浮かべる時はその美しい容姿を口にする。それについてマキナはさして何も思わない。
確かに養父は男ながら美しい人であった。薄い金髪と青い眼はまるで人形のようであったし、30を過ぎた人間とは思えない程若い外見をしていた。それこそ先程のランジェリーが栄える容姿だった事は間違いない。マキナだって初めて見た時はなんて綺麗な人なんだろうと思った。
けれど、その実マキナはその養父をどこかで恐れていたのかもしれない。基本的に2人の兄弟は養父を慕っていたが、時折その仕事の事で言い争う事があった。兄であるイザナは悪い人じゃねぇよと一点張りだ。それはマキナも同じ考えだった。けれど、何か養父は隠している。それがなんなのかマキナはわからずにいた。


養父がクナギリ兄弟を拾ったのは、マキナが9歳、イザナが13歳の時だ。スラムで養父と出会った時の事は昨日のように覚えている。マキナ、と彼は言った。続いて、イザナとも。二人は驚いて(それはもう、その場で齧っていたかちかちに硬くなったパンを落とすほどだった)ぼうとその人を見たのだが、彼は2人を有無を言わせず自分の家に連れ行った。
そしてそれぞれ部屋を与え、ここからがお前達の家だと言い放った。マキナもイザナもぽかんと一連の動きをただ見ることするしかできなかったが、やがてその部屋の家具が子供ながらにどれもとても高価なものである事がわかってきた。
テーブルには焼き立てのパンと美しい果物、そして新鮮そうな肉が並んでいてそれをいくらでも食べていいと言われた。スラムで飢えた日々を送っていた2人にはその誘いはあまりに甘美で、その不審な男の元に留まる事を決めるのに戸惑い等無かった。


けれど日が経つにつれ、養父の異常性が目立つようになってきた。まず養父は昼間は家にいてほとんど寝ている。そして夜になったら血の匂いを纏って帰って来る。
この行動についてイザナは父は人を殺す仕事をしているのではないかと推測していた。マキナもそれについては同意見だが、それに加え父は男娼なのではないかと思っていた。そして寝た男を殺しているのだ。何故そんなことをしているのかマキナにはわからなかったが、そういった素振りを見せる父には確かに畏怖の念も抱いていた。


それはマキナが17、イザナが20になった時の事だ。その頃、イザナは会社員になりマキナは学生となっていた。イザナは当初軍役を望んでいたが、父は断固として許さなかった。君が本当に軍に入るというなら僕が君を今ここで殺す、養父の冷酷を越えて異常性を帯びた言葉にイザナはそれ以上抵抗しなかったし、マキナは垣間見た父の本質を見た様で抱いていた疑問が心の中で膨らむのを感じた。

その疑問を払拭したのは父の昔からの知り合いの一人だ。名をクラサメと言う。父に仕事を持って来ている男で父より少し年上だ。偶然クラサメと2人きりになったマキナは思い切って父の異常な一面を相談することにした。
すると、クラサメは驚くどころかその場で笑い出した。空気が少なくなったのか、マスクをして笑うのも辛いようでいつもは絶対に取る事の無いマスクを取ってまで、その場で大笑いをしている。マキナは呆気に取られながらも腹が立ち、こほんと一つ咳をした。
それに気付いた様でクラサメはようやく笑いを止め、マスクを再び口元に付けた。そういえばクラサメの素顔を初めて見たが口元には大きな傷があった。それを見せたくなくて、今まで隠していたのかと気付いてしまうと何故だか非常に罰が悪くなり、マキナはクラサメから目を逸らした。だからクラサメの目元が笑っていた事をマキナは知らない。

「お前が思っているような事は俺の仕事だな」
「え、娼婦なのあんた」
「違う。人を殺す、ってことだ」

淡々と言うクラサメは不気味を通り越している。まるで今日の朝食はフランスパンだった、なんていうみたいに人を殺すと言う。呆気に取られたマキナに見せつけるようにクラサメはその指の先から氷の結晶を発生させた。これが武器だ、といわんばかりに。

「じゃあ、エースの仕事は何なんだよ」
「囮だな。お前が言うように同じ現場にいるから血の匂いは付くし、妖艶な下着は相手を誘惑し油断させるものだ」

そう言われれば確かに、納得は行く。納得は行くがそれによってもう一つ疑問が生まれる。

「あの人は何者なんだ。何の目的があってそんな事をしている」
「あいつは見ての通り、普通の人間じゃない。私のように魔法が使える人間は昔は多くいたが、今はほとんどいない。いたら異端者だ。けれどエースは異端者どころじゃない。人間だとか、そういった概念を越えている」
「ならば、それを何故もっと有意義な事に使わない?囮みたいな危ない仕事じゃなくてもいいじゃないか」
「わからない。でも確かなのはエースにとって社会や正義、まして世界などよりお前達の方が大事だということだ」
「大事?」
「そうさ、今よりもっとエースは退廃的な生活を送っていたからな。あれでもマシになった方なんだ」
「なんで、俺達なんだよ…。他にこう、もっといなかったのか」
「あいつにとって心残りがお前達だった」
「心残り?」
「かつてエースは世界のために戦い、その身と魂を捧げた。けれどもお前やイザナを救えたか、エースは最後まで確証を得る事が出来ずに死んだ。だからお前達なのだ」

なんだ、その理由。全部俺達のために養父は生きているんじゃないか。もっと楽に生きたいはずなのに自分達兄弟を見つけてしまったから、彼は戦い続ける人生を選び続けるしか無くなった。

「…あんな衣装まで着てか」
「いや、あれは完全に彼の趣味だ。だからあれはあれで楽しんでいるのさ。だからお前がそんなに苦しむ事は無い」

あれ完全に私のパクリだしな、いや正しくは私の中の人が担当したやつのパクリか。真剣にそう悩むクラサメの言う事が段々とわかってきた自分がマキナは本当に腹が立つ。とりあえずメタはやめろ教官、わけがわからなくなるから!この際エースの意味不明な格好は一端置いておくことにするから!




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