「お前は私に興味はないのか。」
「…は?」

 皇帝は見たことの無いような顔をした。寂しそうな、何か言いたそうなその顔はフリオニールの注意を引き付けた。

「お前はいつも光に惹かれる。いつも温かく希望に満ちたものしか見ない。だから私のことなど見たこともないのだろう。」

何を、言っているのだろうか、この男は。自分とは宿敵のはずだろう。そんな男を見る必要など、理解する必要など、あるのだろうか。理解しあえないはずなのに。

「なにを…?」
「わかりあえないかと、戦うのをやめることはできないかと言っている。私はな、この戦いに疲れたのだ。憎しみ合うのも充分だ。」

義士はそこで思い出す。熱くなりすぎるのが自分の短所だとこの世界に来てからも、前の世界でも散々言われた。どうも、自分は熱くなりすぎると視野が極端に狭くなる。

「皇帝、俺達はわかりあえるだろうか。」
にやり、青紫の口が笑う。その毒蛇の笑みはフリオニールを警戒させるのには充分だった。瞬時に距離を取り、馴染んだ剣を右手に滑らせる。皇帝は笑って魔法を射つ。

「そんな日など来ぬな。」

ああ、だから、もう。フリオニールは絶望する。信じた自分に。なんで。なんでどこまでも互いに理解することができないのだろうか。

「私にはお前の夢は、のばらが咲く世界など子供の妄想に聞こえる。お前はまだ絶対的な力に、世界の真意に出会っていないからそんなことを言うのだ。」

ふと、フリオニールには皇帝が可哀想に思えた。身体から絶望がどんどん抜け出ていく。こいつが見た孤独はどんなに寂しかったのだろう。誰かと分かり合えない寂しさを抱えて生きてきたこの男はなんて哀れなんだろう。希望が見えない世界はどんなに辛かったのだろう。

「だからフリオニール、私達は理解しあうこと等ありえ「皇帝!」

皇帝が、じろりと睨む。話を遮られたからか、それとも他のことか。


「皇帝、もしまた絶望して一人になったら俺を呼んでくれないか。必ずいくから。」


皇帝は更に厳めしい顔になる。信じていないのだろうな、それともまた戯言だとか思ってんだろうな、とフリオニールは思った。日頃の言動はお互いに生かされている。忠実に生かされ過ぎて泣きたくなる。

「その言葉、忘れるな。」

フリオニールは少し驚いた。しかし、次の瞬間には笑っていた。そして皇帝も呆れながらも、また。


巡る魂


世界を変えに、いきます。



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